残業で幸福を感じますか?
「わたし、定時で帰ります」
というドラマがありましたが、「働き方改革」は単なる流行りのキャッチフレーズとして冷めてみるよりも「自分ごと」として考えたいなあ、と思っています。
「長時間残業」は、シゴトが嫌になる原因でもあり、メンタルヘルスにも大きな影響を与えるもの。キャリアの相談として「残業」が悩みになることも多い。
ですが、自分自身も以前、労働組合の委員をやっていたので「組織的に残業を減らす」難しさを痛感しています。
今日は、そんな「残業」について考えてみたい。
このテーマを正面から取り扱った本では「残業学」がわかりやすいです。
この本で印象に残ったところを3つ。
1.残業に幸福を感じる人がいる
「残業をして幸福感が増す」という調査結果にびっくりしました。
「超・長時間労働」によって「健康」や「持続可能な働き方」へのリスクが高まっているのにもかかわらず、一方で「幸福感」が増してしまい残業を続けてしまう人がいる。
これは、残業を80時間以上すると「残業麻痺」状態になるらしい。
「仕事が自分の思う通りになっている」という自信の感覚があり「仕事にグッと集中し、完全にのめりこんでいる」という没入状態に近い。
この幸福感を感じている人の精神状態は、心理学でいう「フロー状態」で、スポーツで例えれば「ゾーンに入る」という感覚とのこと。
まあ「本人が幸せなら」とも思いますが、やはり健康上のリスクが増大していくからには問題ですね。「残業麻痺」状態が習慣化されてしまう前に、気づきたいところです。
2.残業インフルエンサー
「周りの人が働いているとちょっと帰りにくい」という感覚。わかります。
自分が入社した時に比べて「上司よりも早く帰らないように」という雰囲気は減った気がしますが、これが今でも暗黙のルールとなっている職場もあるかもしれませんね。
そして、残業にも「インフルエンサー」の存在があるという。
残業インフルエンサーがいる職場では、早く帰る社員は「仕事ができない」というレッテルをはられることを恐れる。
このために、適度に残業をして、ほどほどの忙しさを演出する「フェイク残業」も増えてくるとされていますが、確かに仕事を振られないための自己防衛としてありえますね。
見えない空間での恐ろしい負の連鎖を感じます。
3.残業対策の失敗がブラック化へ
どこの会社も「ノー残業デー」、「残業の時間設定」など、何かしらの取組みをしているところも多い。ただ、この良かれと思って実施した残業対策が、組織をさらに悪化させる危険があるという。
・従業員の正確な労働時間が見えなくなり、残業量が本人にしかわからなくなる
・「会社は現場をわかってない」感が立ちこめ、組織への信頼感が低下する
・施策が次々と自然消滅し、何をしても効果が出ない「改革ゾンビ」状態になる
細かいところの説明は省きますが、「周りの会社が導入したから」という理由で自社に当てはめてもうまくいかないことが多い。会社内でその残業対策の目的がきちんとコミュニケーションができていることが大切、とされています。
シゴトが減らず、大きな方針もない中での中途半端な「残業禁止令」や「定時退社の推奨」は、「シゴトはあるのに帰れと言われても・・」と、さらにモチベーションが落ちていくこともよくわかりますね。
最後に
この本の視点とは違いますが、改めて「残業の削減」を考えると、現場レベルの改善視点だけでなく、会社によっては、ミッションや事業そのものを改めて見直す視点も必要な気がします。
そもそも、会社の経営資源(人)をどこに、どれだけ振り分けるのか。
ときには、ある事業部門をやめるで、シゴトそのものを減らす判断もあるはずです。まあ、これは経営層の判断であり、簡単なことではないと思いますが。
会社の資源をどこに集中投下するか、経営戦略の見直しは「働き方改革」の大きなテーマだと感じます。