#105話考察 命は不平等
『チェンソーマン』105話についての考察。
まず、
既に105話の感想は更新済みなんですが、ちょっとだけ感想を書かせて欲しい。読み返したらクソデカ感情がどうにもならん。
チェンソーマンのネタバレをしているのでチェンソーマンを読んでいない人は絶対にこのnoteを読まないでね。
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○ひとこと(?)感想
読み終えたあとはやっぱり酷い気分になった。膝から崩れ落ちるような気分だった。高校に入ってから友達を作ろうともしなかったアサ。たぶん母親が自分のせいで死んでしまったことが関係あるんだろう。みんなに心を閉ざしていたアサがやっと心を許したのがユウコだったのに。
ユウコは一見ガサツっぽくて良い子なのかイマイチよくわからない女の子だったけど、唯一アサを救うことが出来たという意味では天使のような立ち位置のキャラになるだろうと思った瞬間、
まさかの悪魔になってしまってもうほんとうに落差が激しすぎてつらい。
はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
はい…。
以下#105話考察。
デンジとユウコの“秘密”、そして“親友”について
アサの視点から見るとデンジとユウコは対比になっていてとても面白い。
デンジとユウコはアサに対して共通の”秘密”を持っている。その“秘密”とは“悪魔と契約している”という秘密である(厳密にはデンジの場合、契約であるかどうか定かではないのだが)
アサはこの2人から同日に悪魔と契約していることをバラされているわけである。
しかしデンジが「オレがチェンソーマンなんだ」と言ってもアサは信じなかった。なぜなら本人が自ら“秘密”をバラすわけがないからだ。秘密がバレれば「大変なことになる」から言うわけがない、というのがアサの考えである。
そしてデンジと同じく“ネタバレ”をしたユウコ。(104話のサブタイトル“ネタバレ”は105話にも繋がっていた)
ユウコは正義の悪魔と契約し、隣の家の住人を殺した。「許可なく悪魔と契約することは犯罪」であり、これらの秘密がバレればユウコは大変なことになってしまう。
アサはデンジとユウコに“秘密”を暴露されたわけだが、
デンジの秘密を信じなかったのに対し、ユウコの秘密は信じており、アサがふたりに対して抱く印象が真逆のであることがよくわかる。
個人的にユウコの「(死体)見る?」からの会話の流れが恐ろしくて完全にホラーだと思った。恐怖によってユウコの説得力が爆上がりしていて本当にすごい。こういうところは本当に感動してしまう。……感想になってしまった。
なぜアサはユウコの秘密は信じたのか、については単純に「親友だから」だろう。
デンジのように親友でもないのに出会ったばかりでいきなり「俺がチェンソーマンなんだ」と“秘密”を暴露しても信じてもらえるはずがない。…と当たり前のように私たちは考えているわけだが(吉田も「あれじゃ誰も信じないよ」と言うが)
そもそも“親友”でなければその人の秘密を信じることができない日本社会とはなんなのだろうか?(『チェンソーマン』は特に日本にフォーカスした漫画であると思う)
アサの“秘密”のエピソードをもう一度思い出して欲しい。
「授業中におしっこを漏らしたのを汗だと言い張って、クラスメイトが汗だということにしてくれた」というエピソードである。
アサはユウコ(親友)にはおしっこを漏らしたことを正直に話すことができる。だけど当時のクラスメイトには、たとえ嘘だとバレていたとしても嘘を貫こうとしている。そう、私たちは心を許した相手以外には、“嘘(演技)で武装する”のが当たり前になっているのである。
アサがデンジと会話したとき、アサにしてみればデンジが“嘘”を言っているようにしか聞こえなかっただろう。なぜなら、普通、初対面の人ならなおさら、人は秘密を守るために嘘で武装するからだ。だからアサはデンジの言うことが信じられなかった。
…デンジは頭のネジがぶっ飛んだキャラクターなので、いわゆる“普通の人”には当てはまらず、初対面でも本音でしか会話ができない。二部でのデンジの最大の目的(夢)は「チェンソーマンだとバレること」であるが、これは“嘘(演技)で武装する”のが当たり前になっている世の中において、デンジが夢を叶えるには「秘密を共有できる親友を作ること」と同等であると言えるだろう。(と、この105話を読んで思った)もしもデンジがまともな女の子にモテたいのなら、これから嘘や演技を学んでいくしかない(「俺がチェンソーマンなんだ」という言葉を信じてくれたのはマトモじゃない悪魔のヨルだけだった)(個人的にはデンジは演技とか覚えないでそのままでいて欲しい)
ただ、最初に言ったようにユウコとデンジは対比になっているので、親友が出来たユウコとは逆で、デンジの秘密を信じてくれる人は現れないのかもしれない(これについては106話で再度書く)
第二部で今回までに登場しているキャラのなかで唯一吉田ヒロフミだけがデンジと“秘密”を共有しているが、デンジはなぜか吉田ヒロフミを大嫌いなようだし、吉田はある意味デンジを支配しようとする立場なので親友にはなれないと思う。
正義の悪魔と命の不平等さ、委員長とユウコ
ユウコは「アサちゃんを助けるため(いじめをなくすため)」に正義の悪魔と契約したと言っている。その「助ける」がどういう意味であるかは明確に語っていないが、隣の住人を殺したというネタバレにより、いじめた人間を殺すことで解決しようとしているということを我々読者は容易に想像するだろう。
そしてこの発想は98話で登場した委員長と全く同じである。
委員長→「田中先生はアサが好き→アサが死ねば自分を好きになる→ハッピーエンド」
ユウコ→「アサがいじめられている→いじめっこを殺せばいじめはなくなる→ハッピーエンド」
ユウコは委員長と同じ思考回路なのだ。
実はユウコが登場したときからぼくはずっとユウコが敵なのではないかと疑っていた。なぜなら「アサと友達になろうと近づいてくる人」だった委員長はアサを恨んで殺そうとしていたからだ。ユウコがアサに優しくするたび、委員長のように裏切るのではないかと疑った(酷い)
…それに、第一部では主人公に近づいてくる女キャラが全員主人公のことを殺そうとする話だったので、第二部でもアサに近づいてくるキャラクターはアサのことを殺そうとしてくるんだろうと思っていたのだ。まぁ、これはさておき。
いじめをした人間は罪を背負うべきだと思う。
しかし、罪を犯した人間を殺して良いかと問われると、どうだろう。
委員長とユウコの行動は、ぼくらの命は平等でないことを顕著にあらわしていると思う。
なぜなら、
自分が大切だと思っている人のことは守ろうとするが、
それ以外の命はどうでもよくなってしまっているからだ(これは第一部から続く共通のテーマでもある)
命の重さはその人の正義によって重い軽いが決まってしまう、ひとりよがりなものだということを105話は突きつけたように思う。
長くなってしまったので105話についてはこの辺りで…。
「おいアサどこ行くんだ」のコマのヨルの顔に傷がないので単行本になるときに修正されるんでしょうか。
早く単行本で読みたいですね。