自宅療養生活
どこで拾ったか、コロナ陽性となって約1週間。熱も下がり、咳も出なくなったので、そろそろと自宅で用事を作り出そうと目論んでPCに向かい始めた。
発熱を感じたのは24日(日曜日)の夜のこと。風呂上がりになんとも言えない悪寒がして、風邪薬を飲んで誤魔化していたのだが、翌朝頭痛がするので、そこで初めて熱を測ったところ38.4度あった。すぐに会社に連絡を入れて、検査に行くので休む旨伝えるが、その時点では、インフルエンザかなと思っていたので、「午前中だけ休む」と伝えていた。それにしても、インフルエンザのワクチンも打っているし、おかしいな、いつもと何かが違うな、という予感が頭をよぎる。新型コロナのワクチンは3回打っているから、より確率は低い気もするのだが、こういうときは悪い方向に考えたくなるものだ。とりわけそのとき考えていたのは、新型コロナとなったときの面倒くささ。会社には発症前3日間の行動記録を提出しなければいけないし、なんとなく白い目で見られそうな気もする。職場で第一号ではないけれども、感染が発覚したときの社内の担当者の後処理の大変さはよくわかっているので、申し訳ない気持ちにもなる。22日の金曜日には出社しているので最悪、職場内消毒という話にもなるだろう。そのうえ、誰かに移したとかいうことになれば、犯罪者にでもなった気分である。
自分の身よりもまずは世間体とか、他人への迷惑を先行して考える典型的な日本人だったということ。まぁ、正真正銘の日本人なのだから当たり前かも知れないが、やや情けない気持ちにもさせられる。見栄っ張りというか、自分の病気なんだから、まずは自分の身の安全を考えたいものなんだけど。
かかりつけというか、かかったことのある地元の総合病院に検査予約して、発熱外来に13:10に来てください、ということになる。その際、「お車で来られますか?公共交通機関で来られますか?」と珍しい質問をされる。ハハーンと合点がいったので、「クルマで行きます」と回答すると、待ってましたといわんばかりに矢継ぎ早に、「では、検査の際にクルマのお色と車種とナンバーを伺います」という謎の質問。駐車場の関係かな、などと朦朧とした意識で想像する。それはさておき、発熱していて、クルマの運転は危ない気もしたのだが、クルマで来てもらいたいらしい。そう、感染症の場合はマイカーで移動してもらった方がリスクが低い。この時点で自分自身に起こっていることの重大さを思い知る。同時に世間からばい菌扱いされることが始まったのだと、やや惨めな気持ちになった。
とぼとぼとクルマを運転して総合病院へ。検査よりは1時間ほど早く着いてしまった。駐車場にクルマを止めて、クルマの周囲を見渡すと犬のフンが散らばっている。まぁ、ついていないときはとことんついていない。自分の靴だけはフン害を避けて、よろよろと総合受付へ。発熱しているはずだが、入り口の検温設備(でっかいモニターのやつ)はスルーしてしまった。結構いい加減なものである。受付のお姉さんに保険証と診察券を渡す。にこやかな応対。「発熱外来を予約しているものですが」と伝えると、ややこわばった口調で、「そこの観葉植物の向こう側の椅子に座ってお待ちください」と告げられる。総合受付の一番端に救急用ストレッチャーと椅子が並んだ一列が観葉植物に仕切られて設置されている。私がそこに移動する間に、防護用のフェイスシールドと手袋をさっとはめた同じお姉さんから体温計とパルスオキシメーター(指先にパカッとはめるやつ)と問診票を手渡される。体温は37.7度ある。血中酸素飽和度(SpO2)は96%=正常。身長体重・既往歴などを問診票に記入させられる。ここでもさきほどの謎の質問が。「クルマの色、車種、ナンバー」を記載するよう求められ、携帯番号も記入する。それにつき初めて説明らしきものがあったが、謎は深まった。曰く、「検査が始まるまではクルマで待機していてください。検査予定時刻を少し過ぎたぐらいで結構ですからまたここに来てください。何かあったら携帯に連絡します。」それにしても、クルマについてあれこれ聞かれるのは何故だ。。。
犬のフンに注意しながら駐車場へ戻り、「自車内待機」。クルマは微妙にフンを踏んでいるかも知れないが、そんなことはこの際どうでもいい。車内にフンがつかなければ良いので、靴だけは気をつけようなどと、まだ暢気なことを考える。それにまだ検査結果が出たわけでもないし、おそらくインフルエンザか何かだろう。ワクチン3回打ってるんだぜ。大丈夫、大丈夫!!
13:10の検査時間に再び受付の例の場所に戻ると、パンフレットを渡され(1部は裏返してある)、入り口から道路を一本隔てたところにあるプレハブ小屋へ行くように告げられる。この総合病院は最近建ったばかりで、設備は最新・院内ファシリティも比較的豪華。そこへきてなぜかプレハブへ行くように言われ、違和感を覚える。入ってみると、なるほど、換気設備が完備した、要は「隔離施設」でした。急ごしらえらしく、プレハブだったが、一度に入る人数も制限され、検査がアクリル板ごしに安全に行えるようになっている。受けたのは抗原抗体検査。よくTVで観る、鼻の中に長ーい綿棒のようなものを突っ込んでぐりぐりするやつ。
検査が終わると、その足で「自車待機」へ戻るよう告げられる。検査結果が 出るまでは1時間ほどらしい。ふたたび犬のフンに用心だけして自車へ。幸い、まだエアコンは不要な気温だったので、エンジンは止めたままにしてFMをつける。さあ、まさか陽性じゃないよな、陽性だったらどうする、面倒くさいことになるぞ、犬のフンの臭いはしないか(どうでもいい)。いやいや考えすぎ、熱だって下がってきてるし咳もさほど出ない。ワクチン3回接種済みなんだから陽性はないでしょ。。。などと考えながら1時間。。。
携帯が鳴る。はぁ、待ちくたびれた。
「救急外来の担当医師○○です。」○○は忘れてしまった。何せ、全て電話のみで証明書もない。救急外来からかかってきたので「あれ」という気はした。「陽性ですね。。。」あっけなく事態は展開した。「そうなんですか。。。」「咳は出ますか?」など、通り一遍の問診と薬の説明を受ける「よかったですね。ワクチン3回打ってるから軽いんですよ」とのこと。そういうことなのかと、認めたくない現実を突きつけられる。立て続けに今後のことについて説明が開始される。
「お配りしたパンフレットを裏返すと、神奈川県の担当部署のQRコードがついていますので、すぐLINE登録してください。あなたの個人情報を厚生労働省や神奈川県に提供しますが、よろしいですか。以降、電話とLINEでのやりとりが開始されます。」「このあと、クルマのまま、門前の○○薬局に移動してください。今回は薬局を指定させていただきます。○○薬局の駐車場に着いたら、薬局にはクルマの色と車種とナンバーを伝えてありますから薬剤師がすぐに薬を持って向かいます。クルマから降りずに待っていてください。」「検査・薬代など、全ての費用はご自宅あてに請求書を郵送しますので、後日振り込みで結構です。」
なんのこっちゃと半信半疑で薬局の駐車場へクルマを止めていると、携帯がまた鳴り、「お車は○色の○○、ナンバーは○○○○ですね」「薬剤師がいまから向かいます」とのこと。フェイスシールドをした若い女性の薬剤師が僕の車に向かって小走りでやってくる。なんだか嬉しくなって車中から手を出して手を振るが、向こうは緊張の面持ち。ビニール袋に入れた咳止めと解熱剤を渡される。事情のわからない人が見たら、カップルが薬の受け渡ししているようだななどと、また勘違いしている。
クルマについて検査予約の当初からあれこれ聞かれたのはすべてこの瞬間のためでした。全てが繋がると同時に、初めから最悪の事態に向けて用意されていたストーリーであることに気づく。つまり、事情もわからず暢気だったのは本人だけ。医療従事者のみなさん、本当にご迷惑をおかけします、と同時に感謝しています。
自宅に辿り着いてからLINE登録すると、電話とLINEが頻繁にやってくるようになる。厚生労働省からはAI音声電話、神奈川県からはLINEと担当者の肉声電話、地元の区からは保健所、時折、市からも肉声の電話がかかってくる。5月4日まで自宅療養期間で外出を自粛するように告げられる。自治体間の連携は見事?。国も県も市も区も、伝えてくる内容はほぼ同じ。お世話になっておいて税金の無駄とか言いたくないけれども、お世辞にも効率が良いとは言えないかもしれない。とはいえ、神奈川県からはパルスオキシメーターが無料で送られてくるし、8日分の食料(乾麺、レトルト、お菓子、缶詰めなど)も無料で宅配してくれた。毎日、LINEで体温と血中酸素飽和度(SpO2)を報告するようLINEが飛んでくる。一度、SpO2が95%まで下がったところで、すかさず電話がかかってきた。至れり尽くせりかも知れない見事な対応にはただ感謝。日本人で良かった!!
同居している母は偶然、24日(日)から旅行に出かけていて、連絡を取ったが、元気とのこと。感染もないようなので、そのまま都内のもう一つある母親の住居に戻ってもらい、別居生活を開始。まずは一安心。神奈川県によれば、部屋の消毒は自主判断で、ウィルスの生存期間は5日から7日ほどなので、自宅療養期間終了後しばらくは同居を開始しない方が良いでしょうとのこと。早速アマゾンで消毒キットを購入し、備える。会社も職場消毒はなし、濃厚接触者もいないという判断となる。とはいえ、検査当日と翌日の午後、休みを取ったので、仕事がたまってきた。このGWなか日は休みを取って10連休を目論んでいたけど、なか日はテレワークに変更して遅れを挽回することに充てる。なんだかんだとバタバタしたが、自宅療養期間(5月4日まで)は5月2日(月)を除いて、体調優先で休養する予定。アマゾンプライムで映画を観たり、何もせず横になったり、お得意のぐうたら生活である。
そんなわけで、良いことの何もないかのようなコロナ自宅療養生活かと思ったが、意外にもいろいろ気づきがあるもんです。不思議なもので、コロナに感染すると一番不幸なのは自分のはずなのに、自分を責めたくなる。これはメンタル的に良くないので、気分転換して発散することも重要だと思います。体調はすっかり良くなりました。ワクチン3回接種のおかげです。元気になったついでに、思ったこと、経験したことを発信させていただきました。
皆さんも用心してください。コロナはすぐそばにいます。とはいえ、GWは私の分も楽しんでください!!