私の場面緘黙症。(小学生)
私は物心ついた頃から中学生ぐらいまで
場面緘黙症だった。
家ではうるさいくらいしゃべれるのに、
学校では一言もしゃべれなくなるというもの。
学校での人とのやり取りは、
首振りのみで対応、
朗読など内容が決まっているものは、
か細い声ながら読むことはできた。
それでも小学四年生までは、
家族ぐるみで仲良くしてくれている友達が同じクラスにいたし、
話せなくても仲良くしてくれる人たちはいたようだ。
なので一人でいることはまだ少なかったように思うし、
学校終わりに友達と遊んでいた記憶もある。
私にとっていちばん辛かった時期は、
小学五年生から。
今まで仲良くしてくれた人が誰もいないクラスになり、担任も男性になった。
一気に不安が増した。
この年頃になると一言も話さない自分が、
周りと違っておかしいことが明確になってくる。
こちらを見て遠巻きにヒソヒソ話す女子をよく見るようになった。
グループ分けなどで1人になることも増えた。
どんどん話せなくて孤立していった。
当時、学校でだけ話せなくなるようなおかしい人間なんてこの世に自分しかいないと思っていた。
恥ずかしくて親にも誰にも相談できなかった。
家からあーって言いながら、
普通の声で学校に行けるように試みたこともある。
だが、学校に着くと自然と声は小さくなり喉が閉じていく感覚なのだ。
話しかけられると咄嗟に反応出来ず、
頭が真っ白になり喉がキュッと閉じる。
首を振ることしかできなくなる。
ちなみに場面緘黙症あるあるの、
「あーって言ってみて。」
「なんでしゃべらないの?」
「〇〇さんが笑った!」
は、もちろん経験済みだ。
場所も時代も違ってもどうやら同じことを言われるらしい。
なぜ話せないのか、
人に聞かれてもそれを一番知りたいのは私だ。
暗い、無口、ちびまる子ちゃんの野口さん、と
どれだけ言われただろうか。
その度に、
『本当の私は家での素の明るくておしゃべりな自分なんだ!
こんなのは本当の自分じゃないのに!』
と、心の中で反発する。
だけど、その家での自分を学校の人には絶対に見られたくなくて、近所のお店に家族で行くだけでもとても緊張していた。
とにかく不安や緊張や恥ずかしいという感情が、
普通の人よりかなり強いらしい。
その過度な緊張から逃れるために、
固まってやり過ごしていくうち、
話せない自分が確立してしまった。
何度も、『今日からは話せるようになる!』と言い聞かせて学校に向かった。
だがやはり学校に着くと、
話せない自分が急に話すのはおかしい、
注目されてしまうのではないか、
何を話せばいいのか分からない、
という恐怖で話せなくなる。
そして話せない自分のまま、
その小学校からは、
六年生の夏休み中に離れることになった。
つづく。