始発
新大阪駅から東京駅行きの始発の新幹線に乗った。寒さ厳しいこの季節、夜明けまではまだかかる。始発でも自由席は意外と混んでいるものなのだなと思いながら、窓側の席に座った。
少しうとうとしながら30分程走っただろうか、外がだんだん白んできた。
私は空を見渡して季節を感じるのが好きだ。
はるか昔、平安時代の人が枕草子に『春はあけぼの』と残してくれているように、春は夜明けを、夏は夜を、秋は夕暮れを、そして冬は早朝を良いとするその感覚を共有出来ることがとても楽しいのだ。平安時代にタイムスリップしたら、清少納言に「春はあけぼの、最高だよ!」と言ってあげたい。
さあ、夜明けはもうすぐだ。
太陽が顔を出す、はずだった。
低い雲が山をのみこみ、夜明けが見えない。
空の色は七色をこえて、いつもの空色に変化していく。もう夜は明けてしまったのだろう。
少し残念な気持ちになったが、この日の雲はやけに低く立体的で、その陰影はとても美しく、いつもより空の奥行きを感じられた気がしたので、それはそれで趣きがあった。
清少納言に会ったら、「空の奥行きを感じる雲もなかなかいいっていう随筆も書いてよ!」と言ってみよう。