アナログ
スマホを落とした。
家を出る時には確実に持って出たはずなのだが、自転車に乗り、職場に着いたら見当たらない。
これは困った。
勤務先の電話からスマホに電話してみるが、留守番電話につながってしまう。
とりあえず休み時間に通勤経路の自宅までの道を辿って探しに行った。
見つからないまま自宅に着いた。
念の為、自宅も捜索してみる。
見つからない。
困った。鼓動が早まる。
とりあえず交番だ。
落とし物で届いているかもしれない。
通勤経路の途中にある交番へ駆け込み、スマホを落とした旨を伝えて、書類に住所、氏名、スマホの機種など諸々を記入した。
「スマホに特徴などありますか?ケースの柄など。」と警察の方に訊かれたが、透明のシリコンケースなのでこれといった特徴はないと答えた。
見つかったら勤務先に連絡をくれるとのことで、交番を出た。
やっぱり諦めきれない!
もう一度通勤経路を自宅に向かって辿る。
やはり見つからない。
休み時間も残り少ない。
もう見つからないかも…と意気消沈しながら勤務先へと戻ることにした。
急ぎながら交番の前を通り過ぎたその時、警察の方がすごい勢いで追いかけてきた。
「さっきの!スマホを落とした方ですよね!」
私も慌てて振り返り「はい!そうです!」と返事をした。
警「それらしきスマホが先程届きました!」
私「本当ですか!!!」
警「ピンクの紙貼ってますよね?」
私「ピンクの紙?…? あっ!!!貼ってます!」
警「良かった!」
急いで交番に戻り、スマホを見せてもらった。
私「私のです〜。よかったぁ〜。」
警「ついさっき届けてくださった方がいて、今あなたが目の前を通り過ぎたのが見えたので、思わず走って追いかけちゃいました。」
私「すいません!本当にありがとうございます!」
拾い主の方からお礼を辞退するとの申し出があったそうでお名前などはわからず、結局お礼も出来ないのだが、本当に感謝してもしきれないほどだ。
本人確認と受取の書類を書き、無事手元にスマホが戻ってきた。
その戻ってきたスマホがこちら。
特徴は無いと言い切っておきながら、デジタル機器にアナログのメモをでかでかと貼り付けていたという特徴を拾い主の方や警察の方に見られてしまったことが、とても恥ずかしくなった。