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自由律俳句14
動かぬ木彫りの鳥を愛でる
私には3歳上の姉がいる。私が4歳の頃、遠方に住んでいる祖父母が遊びにきてくれた時の話。
祖父母は遊びに来る時いつもお土産におもちゃや洋服を私達姉妹に買ってきてくれる。その日も祖父母はお土産におもちゃを持ってきてくれた。
「お姉ちゃんにはこれね。前に欲しいって言ってたおもちゃ。」と言って祖母は姉に包みを渡した。
喜んで豪快に封を開けた姉は、品物を見るやこう言った。
「えー!欲しかったやつと違ーーーう!」
私は子供ながらに、お姉ちゃんすごい!自己主張がちゃんと出来る人なんだと、人の顔色ばかり伺っている私には絶対出来ないと感心した。
しかし同時に、いくら欲しかった物と違うとはいえ、わざわざ買ってきてくれたのにそんな言い方をしたら祖父母が傷ついてしまうのではないかと心配もした。ごめんねと謝る祖父母を横目に姉は新しいおもちゃを広げていた。
次は私の番だ。私は欲しいものは事前に伝えてはいない。何を買ってきてくれたのだろう。
「あやちゃんは、何が欲しいかわからなかったから、これね。」
渡されたのは、籐で編まれた鳥籠に入った黄色の木彫りのインコだった。
何故このチョイスなのかと一瞬戸惑ったが、姉があんなリアクションだった上に、妹の私まで微妙な態度を取ってしまったら、祖父母の気持ちはどうなってしまうだろう。祖父母が私の事を想い、悩みながら決めたのだろうと思うと、ちょっとリアルなこの木彫りのインコがとても愛おしくなってきた。
「わぁ〜、欲しかったんだぁ〜。」と私の口から言葉が出てきたその瞬間、姉が食い気味にこう言った。
「嘘だね!これが欲しかったわけないじゃん!」
おぉ、姉よ。何と鋭い言葉。そう、たしかに欲しかったかと言われればそれは嘘になる。最初は間違いなく戸惑った。そこを見逃さない姉はやはりすごい。しかし、いろんな思いが詰まっているであろうなんとも言えない表情のこの木彫りのリアルな黄色いインコを、私は今とてつもなく愛おしいと思い始めているのだよ。
「欲しかったもん。」
私がそういうと祖父母は笑顔になったので安心した。
祖父母がいる間、私はずっと鳥籠を持ち歩いた。祖父母が帰った後も窓際に鳥籠を置き、まじまじと眺めた。すると途轍もなく愛着が湧いてきた。このインコにピーちゃんというありきたりな名前を付けた。話しかけても動かないピーちゃん。よく見るとピーちゃんはとぼけた表情にも見えてとても愛らしく癒された。私の中でピーちゃんはとても大切な存在になった。
そんな大好きなピーちゃんをずっと手元に置いていたのだが、高校生の時の引っ越しの最中に何故か行方不明になってしまった。確かに箱の中に入れたはずなのに、どこを探しても見つからなかった。
突然の別れはとても悲しかった。
ごめんよ、ピーちゃん。
そしてずっとそばで私を癒してくれてありがとう。
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