136 学問の町・御茶ノ水散歩
東京には魅力的で個性豊かな町が数多くあります。
浅草寺を中心に内外の観光客を集める東京きっての観光地、浅草。
動物園に博物館、美術館が集まり北の玄関口として発展を遂げた上野。
電気街として、そしてサブカルチャー発信拠点として栄える秋葉原。
若者の街として今も昔も人気の原宿にとげぬき地蔵を中心にしておばあちゃんの原宿として人気の巣鴨。
そんな数ある東京の街の中で、わたしが好きな町としてまず挙げるのが御茶ノ水。
東京にいたころは一人でもデートでも何度も歩いた町。先日久しぶりに訪ねる機会を得ました。
え?御茶ノ水?何があるの?なんか変わった地名だし。
御茶ノ水といったらお茶の水女子大学とお茶の水博士しか知らない… そんな声が聞こえてきそうです。
ですが御茶ノ水。全国でも名だたる有名大学や観光名所を擁する町なのです。
学問発祥の地、湯島聖堂
駅の改札を抜け聖橋(ひじりばし)を渡ると東京医科歯科大学に順天堂大学。大きな大学病院を擁する大学が並びます。御茶ノ水にはこのほかにも日本大学理工学部や明治大学もあり日本最大の学生の町となっているのです。学生で賑わうもののどこかアカデミックな雰囲気を残しています。なお、お茶の水女子大学は開学当時は御茶ノ水にありましたが、震災で焼けたことなどから大塚に移転しています。
東京医科歯科大学の向かいに静かにたたずむのが「湯島聖堂」。1690年、徳川綱吉が建てた孔子廟です。
1700年代はより広大な敷地を持ち、儒学を学ぶ幕府直轄の学問所として機能していました。湯島聖堂が日本の学校教育発祥の地と呼ばれるのはそのためです。そしてこの聖堂に隣接するように多くの大学が造られることになっていきました。
同じ湯島にある湯島天神と同様、学問の神様として受験生が合格祈願に多く訪れています。
常に時代を先取りする神社のトップランナー・神田明神
さて、湯島聖堂の次に訪ねたのが神田明神。御茶ノ水駅から500mほどのところにあり、神田祭が行われる神社として有名です。
朱に塗られた山門、拝殿が特徴的な神田明神。関東大震災で焼失してしまった後再建する際、当時では珍しい鉄骨鉄筋コンクリート構造で造られました。このため東京大空襲でも本殿、拝殿が消失を免れ、戦禍に喘ぐ東京市民を勇気づける存在となったそうです。
拝殿隣の厩にはかわいい御神馬「明(あかり)」ちゃんがいます。馬ではなくポニーなんですね。なんでポニー…?
末摂社が立派で数が多いのもこの甚派の特徴。稲荷に金毘羅様とここでお参りするだけで大抵の祈願ができてしまいそうです。
そしてこの近くに住んでいる設定だった「銭形平次」の記念碑もあります。石碑の周りは寛永通宝になっているんですね。
また、敷地内には神田明神文化交流館EDOCCOというお土産屋や飲食店、スタジオまである文化発信施設もあります。神社にしては若い女性が多いなと思ったら、この日はアイドルグループのイベントがここであったらしいです。神田明神は秋葉原に近いということもあってサブカルチャーも広く取り込んで神社に親しんでもらおうという取り組みを行っています。先の鉄筋で神社を作り替えたあたりといい、この神社、なかなか先進的な思想を持っています。
神田明神オリジナルのジンジャーエール。こんなサブカル的なキャラも作って推しにかかっています。
こちらは「神田祭だぁー」(カンダサイダー)ということで、サイダーです。こんなネーミング考えてる人ってどんな人なんだろう? 他の神社もコラボとか少しずつ親しみやすさを出そうと取り組みをしていますがここは群を抜いています。
戦争に心を痛め静かに佇むロシア正教会・ニコライ堂
聖橋を挟んで神田明神とは反対側。坂を下りていくとドームが特徴のロシア正教会・ニコライ堂があります。正式名称は東京復活大聖堂教会ですが、ニコライ堂の方が名が通っています。
儒教に神道にロシア正教。多くの宗教施設が共存を果たしているのも御茶ノ水の特徴です。
残念ながらこの日は入場することができず外から外観のみを見ることしかできませんでしたが、ロシアのウクライナ侵攻に対する考えが玄関に掲げられていました。
多くを語ることはしません。1日も早く紛争が終結することを願ってやみません。
聖橋からの絶景のトレインビュー
最後に今回の散歩で何度も渡った聖橋に戻ります。
ここは総武線、中央線、丸の内線の3線が一度に見ることができる東京きってのトレインビューポイントです。
大都会なのでひっきりなしに電車は来るのですが、3線同時に来るタイミングはなかなかありません。しばらく粘ってようやく撮れたのがこの1枚。
…次はもっと時間を撮ってもっといい写真撮ろう。
数年ぶりに歩いた御茶ノ水。solaなどの新しい施設もできてきていますが、変化の中にあってもどこか落ち着いた学生の街がこれからもそのままであり続けてくれたらいいなぁ、と思いました。