なぜ上手くいかなかったのか ー機械学習プロジェクトが失敗した原因ー
昨今、多くの企業がDXに取り組んでいます。一口にDXと言っても、実に様々な取り組みがありますが、そのなかでも、データを分析し需要などの未来を予測する「機械学習」によるデータ活用に挑戦する企業が増えています。これから「機械学習」やデータ活用を進めていきたいと思って、この記事を読んでくださっている方もいるかもしれないですね。
しかし、企業によっては、機械学習プロジェクトを計画しても、途中で停滞したり、立ち消えてしまうことも少なくないようです。せっかくの取り組みが頓挫してしまうのは悲しいですし、なんとしても避けたいですよね…。
そこで、本記事では、既に取り組みを始めている企業の例から「機械学習プロジェクトが失敗してしまう原因」を探ってみたいと思います。
DXにおける「データ」の価値
-AI、機械学習とは?
はじめに、そもそも「機械学習」とは一体なんなのか、おさらいしましょう。
まず、DXにおけるキーワードの一つに「AI」があります。AI(人工知能)は、データから価値を引き出す技術の一種と言えます。データは、“21世紀の石油”と表現されることもあるくらい、非常に価値あるものです。そのデータをいかに活用できるかが、DXを推進する上で重要になってきます。
そして、「機械学習」は、AIの要素技術の一つです。機械学習とは、データに基づいて、そこに存在するルールやパターンをコンピュータに自動的に見つけさせる手法になります。
例えば、機械学習によって導き出したルールやパターンを取り入れた予測モデルを構築すれば、これまで人が勘と経験を駆使して行ってきた予測の精度を高めたり、新たな気づきを得ることができます。
この「機械学習」は、業種業態を問わず多くのビジネスに有用なことから、積極的な活用が進んでいます。
つまり、「機械学習」とは、AIに内包される技術の一つであり、多くのビジネスに活用できるデータ分析方法なのです。
具体的な利用シーン
-小売業の需要予測、製造業の生産計画立案、コールセンターのオペレーター負荷軽減…
では、小売業の需要予測を例に考えてみましょう。小売業のビジネスにおいて、“品切れ”は絶対に避けなければならない事態です。ですが、“過剰な在庫”も無駄を発生させるリスクがあるため、品切れと同様に避けなければなりません。つまり、“どの商品が、どれくらい売れるのか”という需要予測が重要になります。需要予測は、収益を大きく左右する業務と言えますね。これまでは、多くの小売業で、ベテランの方が勘と経験とを駆使して、需要予測を行ってきました。
しかし、ベテランの勘と経験にのみ頼った需要予測は、言うまでもなく属人的で、ミスが発生するリスクもあります。加えて、ベテランの持つノウハウや知見の共有、後継者の育成が困難といった課題もあります。当然、需要予測という業務において、属人性は排除されるべきですが、長年の間、多くの小売業が、この点に頭を悩ませています。放っておけば、事業継続を左右する経営課題にも発展しかねません。
そうした積年の課題を解決するのが、機械学習です。日々の販促実績のデータや店舗周辺の環境に関する情報、トレンドを掛け合わせて分析すれば、誰でも客観的なデータに基づく高精度な需要予測を行えます。
なお、小売業に限らず、製造業においては、生産計画立案のために需要予測を行ったり、不良品検知や生産ラインの異常検知など様々な業務に機械学習が用いられています。
また、コールセンターでは、コール数を予測してオペレーターの配置計画に役立てたり、自然言語処理やテキストマイニング技術と機械学習を組み合わせて、顧客からの問い合わせを「質問」「苦情」などと仕分けたり、様々な用途に活用しオペレーターの負荷軽減に貢献しています。
先行企業はここでつまずいた
-なぜ失敗してしまうのか?
大きな効果が期待され、様々な分野で導入が進んでいる機械学習ですが、いち早く導入に挑戦した企業の事例などからは、機械学習プロジェクトが失敗してしまうパターンやその原因も見えてきます。
これから挑戦したい企業、あるいは、今まさにPoC(概念実証)を進めている企業にとって、先行企業の失敗は貴重な経験です。同じ轍を踏まないために、参考にしない手はありませんね。
では、具体的には何が失敗の原因になってしまうのでしょうか?失敗の原因は、大きく5つあるようです。
【1】 テーマが不明確
まず真っ先に挙げられるのが「テーマが不明確」だった、という理由です。同業他社で成果が上がっていると聞くと、つい「わが社でも!」と考えがちです。しかし、やみくもな取り組みは、プロジェクトの混乱や停滞、後工程からの手戻りを招きます。
機械学習という手段を用いて「解決したい課題・達成したい目標は何か」が明確でないと、本番適用に踏み切る基準も決められず、ただただ検証が続き、いわゆる「PoC疲れ」でプロジェクトが停滞したり、立ち消えになってしまいます。あるいは、実際に業務適用しても、これといった成果を出せずに終わってしまうでしょう。
まずはプロジェクト始動前に、「ビジネス上の問題は何か」といった観点から、機械学習という手段を用いて解決したい課題や達成したい目標を明確にすることが重要です。
【2】課題設定を間違える
2つ目は「課題設定を間違える」ことです。これは1つ目の「テーマが不明確」の次のステップで発生しやすい問題です。
例えば、機械学習で「収益減少」を食い止めたいとします。では、収益が減少しているのはなぜでしょうか? 顧客が減ったからでしょうか? 顧客の購入頻度が減っているからでしょうか? あるいは製造コストが上がっているからでしょうか? それとも他にも理由があるのでしょうか?
課題の設定は、人が行わなければなりません。まずは、問題の本質を見極め、適切に切り分けていく必要があります。問題解決のためには、正しい課題設定を行うことが先決なのです。テーマの明確さや課題設定が肝心、というのは、機械学習に限ったことではありませんね。しかし、3つ目に挙げられるのは、機械学習ならではと言えそうです。
【3】データがない
3つ目の原因は、そもそも「データがない」ことです。機械学習は、データを学習し、そこからルールやパターンを発見する技術です。したがって、解決したい課題や達成したい目標に即した十分かつ適切なデータがあることが前提となります。
例えば、先ほども触れた小売業の需要予測で予測の精度を上げるためには、POSシステムから得られる月別/曜日別/時間帯別などの販売データが欠かせません。さらに、それらに加えて、天候データや特売などのキャンペーンに関する情報、周辺エリアで開催されるイベント情報など、人流の変化や人々の購買行動に影響を与え得るデータもあると良いでしょう。
もっとも、必要になり得る全てのデータを自社で保有していなければならない、というわけではありません。データを販売している事業者から購入する、あるいは、オープンデータとして公開されている気象データや人流データを活用するといった方法もあります。そうした外部データを上手く活用して、自社でデータを蓄積する手間や時間を削減することも、いち早く機械学習の成果を上げるために有効です。
では、失敗の原因の4つ目、5つ目には何があるのでしょうか?
ぜひ、こちらダウンロードしてご覧ください!
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