【連句コラム2】式目(ルール)
連句の一番の特徴は転じにあります。
「歌仙は三十六歩也。一歩も跡に帰る心なし」芭蕉(『三冊子・白』)
転じを意識せずに付けると、つい似た話が続いてしまいます。続きの続きの…と一巻が一つのストーリーのようになることを連句は嫌います。
連句を前へ前へと変化させて進め、立ち止まったり後へ戻ったりしないように作られたのが式目(ルール)です。
式目の中心となるのが句数と去嫌です。
句数•去嫌
連句は一巻の中に、春•夏•秋•冬•月•花•恋を、それぞれおよそ定められた配置で付け、その他神祇•釈教、自然、人事など天地万物を題材とします。
その際に、同種の句を何句連続させて、一旦終わった後再び出すには何句間を空けるか、というルールが句数•去嫌です。
例えば春の句を出した場合、必ず三句は同じ春の句を続けなければならず、五句までは続けてもよい(句数)。次にまた春の句を付ける場合は間を五句以上空ける(五句去)。夏の句を出したら一句で捨ててもよく、最大三句まで続けてもよい。次に夏の句を付けるには間をニ句以上空ける(二句去)。という具合です。
まとめると、こうなります。
① 春・秋…五句去(最後の句から五句以上隔てる)
句数は三句〜五句
②夏・冬…二句去
句数は一句〜三句
③恋…三句去
句数は二句〜五句
④花…折に一つ
⑤月…面に一つ 五句去
名残の裏には無し
⑥その他 同一の物、似た題材•表現はすべて三句去
季語のない句は雑の句と言って句数、句去の定めはありませんが、一巻には月(秋)•花(春)の数が定まっており、夏•冬の句も適当に出す方がよいとされているので、おのずから雑の句も無制限には続かず、季の句とバランスよく配置して調和をはかることが大切です。
連句のルールによく出てくる「嫌う」という言葉、微妙ですよね。禁制だけれど、スポーツのルールと違って、破ったらアウトというわけではない。スポーツと違って、興が乗ればOKという柔軟な側面もある。ルールに雁字搦めに縛られるのではなく、その場に集った連衆が作り上げていく興、趣、粋、そういうものを重視するところが、スポーツと違う文芸のいいところだと思います。
式目の縛りがあることで、自分の使い慣れた散文の思考法から離れ、自分のボキャブラリーを超えて季語や取り入れたい題材から句を作ることで、森羅万象を切り取る叙事叙情の感性を磨くことができるのだと思います。
〈参考文献〉「連句辞典」東明雅、杉内徒司、大畑健治 編