鳩、鳩、鳩
昨年11月に文学フリマで購入したこちらの「鳩のおとむらい」は、全77作品すべてが鳩モチーフという、この本自体が鳩の群れみたいな圧を持つアンソロジーです。
私は鳥好きですが鳩好きというわけではなく、鳥好きなら鳩の群れもいけると思ったのですが、結構きついです。
他の鳥なら…例えばカラスとか猛禽とかシマエナガとかだったら、1冊丸ごといけると思いますが、鳩は…鳩ってなんなのでしょう。
頭から順に読んでましたが、途中で鳩過剰摂取で苦しくなり、読むというより全ページとりあえずめくりました。
その中で、一番好きだったのが、伊島糸雨さんの「不環文通」という作品です。
神話カテゴリーの作品で、地上と天上都市に分かれた世界を市井の人レベルで天使(伝書鳩)が行き来する物語です。
書簡は憂いを帯びた哀しくも美しい言葉で綴られていて、地上側の言葉は謎の文字で読めないのが残念だったのですが、よくよくジーッと見ると、読める…読める!と気づいた時は嬉しかったです。
地上と天上(神)の文通はお互いに憧れを持って心の交流になっているけれど、あることで途絶えることになってしまう。
終末の終末とも呼ぶべき「不環」。
残された希望は祈りのみ。
とても好みな話で、こういう鳩なら胸焼けしない、と思いました。