いつかは忘れてしまうようなこと
日曜の昼間、少し混み合いはじめた喫茶店で本を読んでいる。
目の前には、出会って日の浅いだろう男女。
続かない会話をしている。はじまりってこんなふうだなー。と思いながら、わたしは、文字を追っている。
こういう風にはじまって、
どこかのタイミングでぐっと深まることも
離れることもある。一緒の日常を送ることも、ばらばらの日常に進むこともある。続くことだけがいいことではない、ただ、思い出と感情のバリエーションが増えていくのだとわかったのは、つい最近のこと。
この世界に無数にある物語のひとつの始まりを垣間見たことを嬉しく思いながら、年の瀬の街に出ていく二人の後ろ姿をぼんやりながめ、また、本の世界にもどる。
すぐに忘れてしまうようなある昼のはなし。