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10年前置いてきたこと。
その日は一晩中、放映枠の対応に追われていた。
決定権のある絶対的上司は、オフィスから歩いて15分ほどの自宅へそそくさと帰宅し、
決定権のない私が残り、広告代理店からCMなどそのまま放映するか、AC差し替えにするかの判断を迫られていた。
※その後、TVで流れるCMがほとんどすべてACだらけになり、いろいろ批判などもありましたが…
カラクリとしてはあれはすべてすでに放映権を買っているスポンサーがすべてそのまま広告費を払ってACを流してもらっています。
1日の中でCMは○%流さないといけないと決まっているので、
CMをとばすことはできない仕組みになっています。
だから、あの頃はACだらけだったのです。
アメリカ本社が開いて、判断がでるまで決定を待てと自宅から指示する上司。
広告代理店から1分1秒で判断を迫られる私。
「ちなみに、大手はほとんどACに差し変わってます。」
日本社会の広告業界の流れに乗らず、ネガティブなイメージを付けるほうがよくないのではないか。
上長に相談したくても電話は通じづらい。
通じたら、のんきな返事。
「だから、本社があくまで待つしかないやん?はははー」
彼女の判断を仰げない、と判断した私は、
その晩オフィスに残る役職者に相談。
数日間のすべての放映枠をACに差し替え依頼。
「あんた、なんで勝手な判断をしてくれてるの!本社の判断を待てっていったでしょ!」
電話越しでひどく怒鳴られ、何度も怒鳴られ、
さらなる業務対応に追われ
仮眠が取れたのは朝5時すぎでした。
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一人暮らしの部屋に帰れる気がしなかった私は、
普段であれば1時間30分もあれば余裕で帰れる実家に
電車をなんとか乗り継ぎ3時間以上かけて帰宅。
受け入れてくれた両親は、仙台に住む姉一家の心配でいっぱいでした。
怒号を浴び、よくわからない感情で仕事をしながらなんとか一晩乗り切った、疲労困憊な私。
目の前にいるそんな私は、両親の眼には映っていないように感じました。
そうだよね、大変な家族が身内にいる。
もちろん、私も姉一家のこと、なによりも心配していました。
だからこそ、こんなことでタイヘンダッタなんて、私は言ってはいけないんだ。
その時期の私は感情をどこかに置いて来ようと決めました。
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もうあんな悲劇が起きてほしくない、そう思っていたのにその9年後
もっとひどい事態が世界を包み込み
あの時私が感じたような
「つらい、でももっと大変な人たちがいるんだから、こんなんでつらいなんて言ってはいけない…」
そう感情をおし殺して苦しんでいる人が、いるのではないかなと思っています。
そんな風に思わなくてもいい、思ってほしくない。
その人がその時「つらい」って思うなら、それはつらいんだから。
「たいへん」って思うなら、それはたいへんなんだから。
誰かと比べなくたっていい。
自分の気持ちを吐き出したっていい。
10年前の自分にいいたくて、
あの時、置いてきた感情を昇華させる、成仏させるために。
いま、辛い気持ちをどこかへ置いていきたい誰かへ。
canela