君と異界の空に落つ2 第17話
春の陽気に緑が揺れる浅い清流を遡る。近くで鶯が鳴くのだろう、細く頼りない音のそれは、まだ上手くない声で、音程も外し気味。けれど世界を彩るには十分な音色であって、耀の心を豊かに飾る。きっと善持も同じだったのだろう、春だなぁ、と嬉しそうに木々を見るので、耀の目より余程春の景色を感じていたのかも知れない。
若葉と枝の間から真っ直ぐ降りる光の筋へ、手を翳したり、目を細めたりして沢の横道を登っていく。あちらの世界に比べたら、どこも綺麗な空気だが、沢の上を流れゆく澄んだ風を吸い込むと