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「サンクチュアリ」と「江戸時代」で見る相撲

こんにちは!
すっかり気候も秋めいてきましたね。


前の記事で、長期にわたる制作スランプになり、逃避の如くひたすら日本ドラマを観続けた話を書きました。


日本ドラマを観るのはとても久々だったので(かれこれ20年以上は遠のいていた。。)ストーリはもちろん映像や音響のクオリティの高さに驚愕!

特にサブスクのドラマは、ターゲットを日本だけでなく海外にも向けているため、もはや島国ドラマではない。

スポンサーの圧力もないのか、製作陣や俳優の、のびのびとした制作心が伝わってきます。

ただ面白いだけでなく、作品の雰囲気自体に深みがあり、観た後に残り香的なものが漂ってくる。

日本のエンタメ産業は完全に韓国に抜かれたと言われていましたが、そんなことはない。
どんどん盛り返してくれることでしょう!

その中でも、Netflixオリジナルドラマである「忍びの家」と「サンクチュアリ」。
日本の伝統である「忍者」と「相撲」をテーマに、ひねりを聞かせて現代風に仕立てた結果、どちらも全世界で大ヒットを飛ばしました。


前回は「忍びの家」を観て忍者作品を作りましたが、今回は「サンクチュアリ」にインスパイアされて相撲作品を作るお話になります。


Netflixシリーズ「サンクチュアリ -聖域-」

「サンクチュアリ ー聖域ー」

このドラマについての率直な一言を、糸井重里さんが「まさにその通り!」という感想を「ほぼ日」で書かれていて

「設定が相撲の世界だし、人気のイケメンが

主役でもないし、やや暴力的だったりもするし」

(でも)「『すばらしい娯楽』が、

まだまだあるぞ、という気持ち」

「日本制作の『サンクチュアリ -聖域-』の

おもしろさは、すっごい大穴を当てたような

気分にさせてくれた」

〈2023年7月8日の「今日のダーリン」より〉

https://www.1101.com/n/s/kan_eguchi


確かに、相撲のドラマってどうなのだろう、と観る前は思っていました。
しかも、主人公がこのビジュアル。

Netflixシリーズ「サンクチュアリ -聖域-」


お世辞にもカッコいいとは決して言い難い。


染谷将太も丸々と太ったビジュアルで登場する始末。(よくぞここまで太った!!)

Netflixシリーズ「サンクチュアリ -聖域-」

今まで相撲の映画やドラマが全然なかったのは、役者の身体作りの難しさだけでなく、単に見た目が美しくないからヒットしなさそう、という理由で作られなかったのではないでしょうか。

いくら国技とはいえ、エンタメで予算をかけて制作するとなると、たじろぐ気持ちがよくわかります。

実際、サンクチュアリも見始めは、煌びやかさとは程遠い、全体的に薄暗く排他的な印象でした。


でも、観ている内にすごく惹き込まれました!

Netflixシリーズ「サンクチュアリ -聖域-」

破天荒で荒れくれものの主人公。
喧嘩ばかりで、モラルがなく、優しいお父さんに対しても無碍に扱う始末。

そんな獣のような主人公に、最初は嫌悪感を抱くのですが、その影には家族関係の複雑さや不遇故の歪んだ愛情があるのです。

ある時、父親が交通事故に遭い入院をしてしまいます。
そこで主人公は、親の入院費と借金を返すために相撲部屋に入門。

そこでは壮絶な師弟関係や、相撲業界の汚職やドロドロの人間関係がはびこっていたのです。


ここまで相撲の世界をダークに描いて良いのだろうか!思ってしまうくらい酷い。
昭和のスポコン時代ならまだしも、今は令和の時代。
コンプライアンス引っかかりまくりでは!?

初回から、先輩力士のトイレの始末を下っ端にさせる様子など、赤裸々に描かれています。お尻に手が届かないって本当なのか!?

散々な目に遭い、挫折も味わいながら、獣のような主人公が本物の力士へと成長していく過程を描いていきます。

最後は、荒れくれ者だった主人公の猿桜(主人公の四股名)を、心から応援してしまいます。

Netflixシリーズ「サンクチュアリ -聖域-」

猿桜演じる一ノ瀬ワタルさん。
役者になる前は、タイでムエタイの修行をされていたそうです。

彼の肉体作りも本当にすごくて、終盤になるほど力士としての体格が完成されていくのが分かりました。
演技以上のリアリティと本気度が凄まじく、自分の個性と役所をきちんと活かされた大役だったと思います。


自分のリアルな相撲との関わりは小学校の時でした。

(C)日刊ゲンダイ

一緒に住んでいた祖母と相撲を観るのが好きで、時は若貴ブーム到来の時代。

「体力の限界!」という、千代の富士の引退宣言に日本中が涙で溢れ、小錦や曙なども活躍していました。

祖母は相撲が大好きで、本場所が始まるといつもワクワクしながらテレビから離れませんでした。

思えば、祖父母の世代は皆が相撲が大好きで、各家庭や街の中華屋さんなどで、当たり前のように相撲を放送していましたね。

すっかり相撲から遠のいていた現在、サンクチュアリを見るまでは忘れていました。


日本のスピリットである相撲。

相撲の歴史はとても古く、元々は神道の儀式の一環だったそうです。

古事記や日本書紀にも、相撲の原型となるエピソードが記されています。

現在の相撲が形成されたのは江戸時代ごろ。

番付が正式に作られ、土俵入りや塩撒きなどの儀式も定着。
土俵も今の円形上に確立します。

そして、力士という専門の職業が誕生し、庶民の娯楽として定着していきます。

「江戸の三大娯楽」といえば、歌舞伎、遊郭、相撲と言わたほどです。

また、「江戸の三男」といえば、与力、力士、火消し頭の三職と言われていました。

それだけ、当時相撲は大変な人気があり、スター性がありました。


当時の役者絵。
今でいうところのプロマイドです。

力士のプロマイドは飛ぶように売れ、都市部では相撲が始まると連日たくさんの人が会場に集まりました。

日本の推し文化は、DNAとしてずっと受け継がれているのを感じますよね。


文筆家であり元漫画家でもある、杉浦日奈子さん。

最近彼女の本にハマっていているのですが、彼女の描く江戸時代の世界は本当に面白くて。
一気に江戸が愛おしくなります。


260年続いた江戸時代は、とても気宇な時代とも言われているそうで。

内乱も対外戦もなく、二世紀半も平和を貫き通した時代は、どこの世界を見ても珍しく、世界史の奇跡と言っても過言ではないとおっしゃっています。

また、都市部であった江戸の街は、町人50万人、武家50万人と総計100万人が住んでいたといいます。
これはその時代にしてみるとかなり多く、安定した人口推移と、高度な文化を築いた世界最大の都市だったそうです。



著書「お江戸暮らし」の序章を読めば、江戸時代がいかに凄かったかよく分かります。

杉浦さんは2005年に46歳の若さでお亡くなりになっています。
日本にとって本当に惜しい方を亡くしたと思います。


別書「一日江戸人」

相撲についてのエッセイがこれまた面白い。
当時の相撲の様子はこのような感じで、とにかく人で溢れかえっています。


当時の相撲会場は完全に野外で、丸太を組んで作った仮設会場でした。
終わり次第、その都度取り壊していました。

また、当時は男性しか相撲を観ることができず、正式に女性も会場で観れるようになったのは明治に入ってからだそうです。

夏の炎天下の日は、暑さ対策として上から水をブン撒いていたそうです。
そうすると、たちまち蒸し風呂化してしまい、汗と蒸気とで観客が「男のふかし芋」化していたそう。

それでも相撲の熱は冷めやらず、ふかし芋になりながらも、熱狂的に試合を観戦していた江戸時代の人々を思い描くと、何とも言えない笑いが込み上げてきます。


当時の花形スターたち。

今でいうスノーマンや韓流スターといったところでしょうか。


こちらの錦絵を見ていると、力士の顔の違いに目が行きます。
当時描かれる人物像って、今の私たちから見ると顔の違いがそんなにわからない。
でも、よくよく比べてみると、それぞれの個性をきちんと描いているんですよね。

ずっと見ていると、当時の力士たちが蘇ってきます。


そんな中、1人とても興味深い力士がいました。

中央にいる小柄でつぶらな瞳のな人物。

横綱「秀ノ山雷五郎」

他の力士と比べて、とても可愛らしい。

皆が
「ごっつあんです!!」

と言い合っている中で、秀ノ山だけは

「こんちは〜」

とでも言ってそうな。


今時の柔らかい推しメン、江戸に有り。

これだったら100歩譲ってスノーマンにも入れる!?笑

宮城県の気仙沼出身の彼は、江戸に出て相撲部屋を訪ね歩くも、身長の低さ故に相手にされず、一時は故郷に帰った時もあるそうです。

夢を諦めきれず、怪力を武器に何とか江戸に舞い戻り、入門。
第9代横綱に昇進した時は、御年なんと37歳。
当時は人生50年と言われている時代に、偉業の昇進でした。

挫折を繰り返し、ガッツの末に掴んだ栄光のストーリーも相まって、ますます好きになった秀ノ山。


次回の作品のテーマは「相撲」に決定。
横綱・秀ノ山を「プリン力士」に仕立てます!


題して
「Sumo de Pudding」

続きます。


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