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白熊杯選者の一人、亀山こうきの特選6句の発表(亀山賞)


 俳句大会、『白熊杯』。皆さんお疲れさまでした!

 僭越ながら今回も俳句部門の選者の一人を務めさせていただきました。無記名の状態ですべての句を拝見させていただき、『上位6句+予選6句の計12句』を選句させていただきました。

 俳句はいつでも人間のそばにいますが、俳句がその人の人生の主役になることはほとんどないでしょう。生きていればいいことだって悪いことだって常に起こります。たかだか17音の韻文に興じている時間なんてない。そんな気分になれない時は絶対にあります。 

 でも俳句は裏切りません。どんな時でもその人のそばから離れず、本当にその人の人生に必要な時「ほら、僕がいるよ」とひょっこり顔を出してくれます。

 何べんでも言います。俳句はあなたを裏切りません。人に選ばれるとか褒めらえるとか、そうじゃないとか。そう言った次元を超えて、人を根底から支えてくれます。

 かっこつけましたが、これからも俳句をお願いいたします。

・白熊杯の亀山賞(特賞)


和解して日向ぼっこのへそピアス

作者 はねのあき さん
 何と和解したのでしょうか。とても考えさせられました。普通に読んだらへそピアスをしたことを親しい人から叱責されて、そのことについての和解といったことになるのでしょうか。

 ただ季語の日向ぼっこがストーリーの背骨として、何か秘めているように思われてならないのです。和解という言葉の重み。日向ぼっこという透き通るほどの平穏。この背反するニュアンスが、壮絶なドラマがその背後にあってのではないかと感じさせてくれます。

 季語の扱い一つで俳句の印象はずいぶんと変わります。この句はまさにそんなことを感じさせてくれる一句でした。素敵な句をありがとうございました。

・亀山賞次席(2位)


どの人も寡黙なペンギン冬の街

作者 石塊 さん
 塚本邦雄の短歌『日本脱出したし皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係も』を思い出しました。
 日本人はペンギンが大好きですよね。可愛いのはもちろんですが、極寒の中、文句ひとつ言わずじっと立ち続ける姿に自らの境遇を重ね合わせやすいといった理由もあるのだと思います。

 この句はまさにそんな代表的な日本人像を見事に表していますね。寡黙ですが、みんなが黙ってそばにいてくれればきっと温かい。
 とにかくおしゃべりで、口和禍の元を体現する私。自戒の意味を込めて採らせていただきました。ありがとうございました。

・3位


冬ざれてアンドロイドの顔になる

作者 汐田大輝 さん
 投句一覧表にこの句を見つけて、笑ってしまいました。冬ざれは草木の枯れて荒涼たる様子を表す季語。その様子が、なんとなく無機質な感じを想像するアンドロイドの顔をイメージさせます。

 多分普段からアンドロイドの顔をしている私。大変共感しました。

・4位


極寒の中やジャムティー甘ったるい

作者 械冬弱虫 さん
 ジャムティーの匂いがします。極寒の中ただその甘さだけを噛み締めています。

 一人で飲んでいるのか、親しい人と飲んでいるのか。読み手によって解釈が変わる句ですね。冬らしくてとても好きです。

・5位


空風よいつだってうまくいかない

作者 リコット さん
 感慨がこもっていますね。空風の寂しい中、その心境がひと際クローズアップされます。「うまくいくさ」と無責任なことは言えないけれど、こんな素敵な句を詠めるリコットさんならいつかはうまくいくよと信じています。

・6位


小春日にあなたの親になれました

作者 とのむらのりこ さん 
 素直な言葉。故に素直に伝わってくる。小春日というほっとした季語が作者の思いをしっかりと支えている。

と言う言葉が季語に呼応して味わい深い一句になっています。・その他最終候補6句の紹介

ねぇ聞いて雪降る音を心音を
うつスピ さん

北風や筆の進まぬラブレター
旬 さん

たばこ屋のたばこのない棚冷たい風
じょーじ さん

新年は鯨の如く訪れる
しんきろう さん

雪富士へパラグライダー飛び立てり
カッピー さん

裏白や始祖鳥は歯を持つと云ふ
白 さん

・他の先生方の選者賞のリンク


・ご投句一覧


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亀山こうき/俳句の水先案内人
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