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痩せたソクラテスであれ。ビジョナリーカンパニー(ジムコリンズ著)を読んで

1995年初版の言わずと知れた名著、ビジョナリーカンパニー。ビジョナリーカンパニーとは、ビジョンを持っている会社。未来志向の会社。人々に良い影響を与えるための、カルト的な信条を持つ会社。広く同業他社から尊敬を集めてきた会社ないし、組織の呼称である。分かりやすく言うと、CP関連のIBM、ポストイットの3M、ウォルトディズニー、日本の会社ではソニーなどがビジョナリーカンパニーと定義されている。社会人1年目で読んで大いに感化された一冊だが、読み返してみるとビジネスのみならずプライベートにも応用できることが、本書に多く書かれていることに気が付いた。以下に特に小生が感銘を受けたことをまとめておきたい(私見です、詳しくは読んでみてください)


ANDの才能(P79~P91)

「ビジョナリーカンパニーの理念は現実的な理想主義というべきものであり、(中略)ビジョナリーカンパニーは、業種に関係なく、理想と利益を同時に追求するような対立する命題を同時に追求する「ANDの才能」を、(ビジョナリーカンパニーになりきれなかった)比較対象企業よりも大切にしている。(比較対象企業は、理想か利益かというようなどちらか一方しか選べない、「ORの抑圧」から抜け出せていないことが指摘されている)

基本理念は守り、基本理念を守るための行動は柔軟に変更せよ(P134~P135)

「ビジョナリーカンパニーは、基本理念を大事に維持し、守るが、基本理念を表す具体的な行動は、いつでも変更し、発展させなければならない基本理念を、文化・戦略・戦術、計画、方針などの基本理念ではない慣行と混同しないことが、何よりも重要である。時間の経過とともに、文化の規範は変わる。戦略は変わる。製品ラインは変わる。目標は変わる。能力は変わる。業務方針は変わる。あらゆるものが変わらなければならない。その中でただひとつ、変えてはならないものがある。それが基本理念である。」

現状に不満を感じる仕組みを作る(P317)

「偉大な芸術家や発明家がそうであるように、ビジョナリー・カンパニーも不満を栄養に成長する。不満がなくなれば、自己満足に陥り、自己満足に陥れば、勢いが衰えるしかない。」

ビジョナリーカンパニーになるための要素(P338)

「ビジョナリー・カンパニーになるための基本的な要素はきわめて単純なのである。昔ながらの厳しい規制、猛烈な仕事、将来のための絶えざる努力…、これが基本なのだ。(中略)近道はない。魔法の薬はない。抜け道もない。ビジョナリーカンパニーを築くには、長期間にわたる厳しい仕事が必要なのである。成功を収めても、それが終点になることはない。」

ビジョナリーカンパニーの教訓は個人に適用する(P378)

「ビジョナリーカンパニーから学んだ教訓のほとんどは、スケールは小さくなるが、自分の責任の範囲で適用できる。(中略)英雄的な指導者という考え方に従って問題解決のためにやみくもに突っ走るのではなく、「この問題を解決するために、どのような過程を使うべきか」と考えてみる。また、強烈な理念に基づくカルトのような文化は、組織(個人)のどのレベルにも築くことができる。そして、組織全体にはっきりとした理念がないのであれば、なおさら、自分の責任の範囲ではっきりとした理念を定める必要があり、その、自由があるのだ」

・読了の感想・メモ

「満足した豚であるより、不満を抱えた人間のほうが良く、満足した愚か者であるより、痩せたソクラテスのほうが良い」とはJ.S.ミルの功利主義論に出てくる言葉である。ミルの功利的主義の思想は、後に超大国アメリカを支える国家的思想となる実用主義(プラグマティズム)に継承されていき、その理論によって、多くの功利主義的な集団が活動するようになった。

・上記の言葉は、そんなミルの思想を端的に表した言葉であるが、本書の中で定義されているビジョナリーカンパニーの条件に合致していることに気が付く。そもそもミルの思想とは、ベンサムの「最大多数の最大幸福」という言葉に代表される功利主義の理論をベースに、さらにそこから一歩踏み込んで、楽しいことが長く続くような量的な幸福だけでなく、人間が人間らしく価値のある快楽を得られる、質的な幸福も重要であると説いている。これは畢竟、人間が自由に考え、自由に発言し、自由に行動することが大事と考えている訳である。

・ビジョナリーカンパニーと呼ばれる魅力的な会社は、理念として、行動として、ベンサムやミル功利主義的思想やプラグマティズム的思想を十分に実践できている会社ということができるのではないかと直感した。(検証も不十分だし、浅学故、プラグマティズム等知識は表面的なものでしかないので、機会をみて理解を深めたい)

・そもそも小生自身の生きていく上での基本理念は何なのか、と思い至り、答えが出せないことに愕然とし、いかにいままで適当に生きてきたのか思い知らせれ、恥ずかしくなった。

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亀山こうき/俳句の水先案内人
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