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【句集紹介】雪山 前田普羅句集を読んで
・紹介
前回紹介した、三橋敏雄が海の俳人なら、山の俳人は前田普羅と言えるであろう。
前田普羅は大正から昭和前期にかけて活躍した俳人である。ホトトギスの四天王の一人として活躍をした。
しかし、普羅の俳句のほかにも、詩や紀行文、戯曲などの文筆もこよなく愛していた。だからだろうか、その句の多くは、堅実な写生句であるが、季重なりの句も多く目につく。
彼が主宰していた辛夷の理念には「わが俳句は俳句のためにあらず、更に高く深きものへの階段にすぎず」とある。
前田普等にとって俳句はあくまで表現方法の一つであり、俳句は俳句としてそのルールを概ね遵守しながらも、最も大切にしたことは、心の赴くままに対象物を詠むことだったのだろう。
友であったという飯田蛇笏も山について多くの句を詠んでいる。蛇笏の句も普羅の句も、きっちりとした伝統俳句系のとして醸し出す雰囲気は似ている。しかし、詠み手の根底にある俳句観としては、微妙な差異があるように感じられる。蛇笏は日本古来の精神性に根差した俳句という感が強く、普羅は大正デモクラシー以後の自由でモダンな気風を感じるのだ。(あくまで小生の感想です)
今回も10句厳選した。雪と山とをこよなく愛したという普羅の句を是非楽しんでいただけたらと思う
・厳選10句
病む人の足袋白々とはきにけり
春尽きて山みな甲斐に走りけり
雪折をあつめ来りぬ雪の上
雪とくる音絶え星座あがりけり
霜つよし蓮華とひらく八ヶ嶽
奥白根かの世の雪をかがやかす
この雪に昨日はありし声音かな
ランランと秋の夜告ぐる古時計
傾きてオリヲンあがる鴨の闇
凍蝶の落ちたる如く雪に立つ
・作者略歴
前田普羅。本名は忠吉。明治17年4月東京生。早稲田大学中退後、官吏などを経て、時事新報、報知新聞の記者となる。ホトトギスにて、高浜虚子に激賞され見出される。飯田蛇笏、原石鼎、村上鬼城らと共に虚子門の四天王と称される。富山で「辛夷」を主宰。自然、山岳をよんだ句が多い。昭和29年8月8日死去。享年70歳。
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