元吹奏楽部が思う「甲子園ブラバン応援」
夏の甲子園が開幕し、高校球児が連日戦いを繰り広げている。
出身が愛知県なので推しチームは愛工大名電。申し訳ないが「夏の名電=初戦負けのイメージ」が強すぎてあまり期待していなかったが、2回戦も突破してうれしい限り。
そして個人的には、甲子園のブラバン応援で流れてくる曲たちに「あ~あの曲ね~!」と懐かしくなったりもする(私は野球応援はしたことはないが)。
一般人が一番吹奏楽に触れる瞬間が甲子園というのは間違いないが、チアや応援団と違って、吹奏楽部は野球応援のために存在するわけではない(チアもれっきとした競技だが、名前がチア=元々が応援なので)。
では一般的な吹奏楽部がどのような夏を過ごしているのか?「響け!ユーフォニアム」見てるから知っているよ!という方もいるかもしれないが、改めて書いてみる。
吹奏楽部も、夏は戦っている
吹奏楽部も、夏はコンクールシーズンだ。地区によって差はあるが、私の出身の愛知県だとだいたい下記の通り。
地区大会:7月下旬
県大会:8月上旬
県代表選考会(※):お盆前
県代表選考会は愛知県独自の選考会で、県大会上位5校×2日=10校の中から東海大会への出場校を決める選考会
東海大会:8月下旬
全国大会:10月
上記は朝日新聞社主催のコンクールだが、さらに中日新聞社主催のコンクールに出場する学校もある。
中部日本吹奏楽コンクール愛知県大会:7月下旬~8月上旬
これに加えて、前年度の高文連の大会で県1位になっていると
全国高等学校総合文化祭:8月上旬
という、鬼スケジュールもいいところである。
実際に私は高2の夏、朝日の地区~東海大会、全国高等学校総合文化祭のスケジュールをこなした。今振り返るとよくやったなあという感想しか出ない。総文祭で京都(しかも舞鶴)に行った翌々日に県大会、その5日後に県代表選考会だぞ。
野球応援の内情
となると、そんな鬼スケジュールで野球応援いつやってるの!?という疑問が出てくると思う。
だいたい内情は5つに分けられる。
主力メンバー以外が野球応援
大会敗退して野球応援
大会と平行して野球応援
吹奏楽部以外が野球応援
行かない
主力メンバー以外が野球応援
私立の吹奏楽強豪校にありがちなパターン。コンクールに出られるのは最大55人と決まっているため、部員が多い場合は全員がコンクールに出られるわけではない。残ったメンバー(主に1年生)で応援に行くというパターンはよく聞く。ただし強豪校なので、残ったメンバーでも普通に上手い。
大会敗退して野球応援
甲子園に出てきている吹奏楽強豪校以外はだいたいコレかと思う。高校野球が始まる頃には県大会が終わっているので、大会後に応援に向かうことになる。
大会と平行して野球応援
甲子園ではない県の大会であっても、あまり強くない高校でないと合間で野球応援に行ったりするらしい。大変だな・・・
吹奏楽部以外が野球応援
私の母校がこれ。吹奏楽部が忙しいのは重々わかっている野球部が、中学校時代に吹奏楽部だったが高校は部活に入っていない人をターゲットに応援人員を募集していた。
しかし楽器は吹奏楽部が使っていて余っていないので楽器持ちオンリー、聞いた話によると毎年5人くらいしか集まっていなかったとか・・・
行かない
公立校の場合、意外とこれが一番多いんじゃないかと思っている。中学時代の部活の友人でも、高校で野球応援した友人はほぼいなかったので・・・。
野球応援、ここが大変(だと思う)
自分自身は野球応援に行ったことがないが、自明である「暑い」を差し引いてたとしてもパッと考え得るだけでも2つは大変なことが浮かぶ。
木管楽器への影響
楽器運搬
木管楽器への影響
木管楽器とは?という人もいると思うので説明すると、吹奏楽の中では下記の楽器のことを言う。
フルート
クラリネット
サクソフォン
オーボエ
ファゴット
木管楽器といえどフルートとサクソフォンは金属製だが、クラリネット・オーボエ・ファゴットは本当に木でできている。
そして、この木でできている楽器は温度変化で割れる。ウン十万、ファゴットに至ってはウン百万のものが割れる。考えたくない。(修理はできる)
2000年台半ば、クーラーもなく暑い教室で練習していたとはいえ!直射日光が当たるような場所で演奏するのとはやはり雲泥の差。砂ボコリも入るし、楽器のことを考えたら絶対に外で吹きたくないというのが木管楽器奏者の思い。(金管楽器は丸洗いできるのでその点はナーバスになりにくい)
ちなみに音質は良くないがプラスチック製の楽器(プラ管と呼んでいる)もあり、おそらく私立強豪校はプラ管のクラリネットを持っていてそれを屋外で使っていると思う。(実際にそんな話はどこかで聞いた)
楽器運搬
自分の手で持ち運べる楽器なら問題ないが、応援=合奏となるともちろんチューバやバリトンサックス、打楽器等自分の手で持ち運べない楽器も持っていく必要がある。
大阪桐蔭のように学校でトラックを持っている学校はほぼ皆無といってよく、だいたいはトラック業者に運搬を依頼するのだが、もちろんそれにはトラック代やドライバー代がかかる(先生が運転できないサイズのトラックの場合もあるため)。
その運搬のお金、私立校や甲子園出場校なら学校から出るんでしょうけど・・・地区大会かつ公立の場合はどこから出るんですかね???
公立高校で応援がないのはこれが一番大きいと思っている。
ブラバンに興味を持ったら定期演奏会へ
というわけでつらつらと野球応援×吹奏楽部ネタを語ってきたが、吹奏楽部はコンクールと同じくらい「定期演奏会」を大きなイベントとして捉えている。
そこそこ頑張って活動している高校であればどこも年1回くらいは定期演奏会をしている。しかも私立の強豪校を除けば、ほとんどが入場料無料である。
コンクールと違ってクラシックの知らない曲ばかりということはなく、ポップスや寸劇、ダンスを交えた一般人でも十分楽しめる内容になっている。
「それならプロの演奏会でも良くない?」と思われるかもしれないが、それは「高校野球よりプロ野球で良くない?」って言ってるのと同じで、高校生からしか得られない感動がある(字面にするとなんか気持ち悪いが、事実としてあると思う)。
私も社会人になってから高校生当時同じくらいのレベルでライバル校だった高校の定期演奏会に足を運んだことがあるが、1人もメンバー知らないのに号泣した。
今はコロナで部外者が来ることが難しい演奏会もあるかもしれないが、下調べはした上で是非行って、吹奏楽部の青春を感じてほしい。