選挙キャンペーンと写真

去年から今年は選挙の年になると言われていた。世界に与える影響の大きさから11月のアメリカの大統領選が一番の目玉なのだが、6、7月が急に選挙の季節になってしまった。イギリスでは保守党のスナク首相が任期満了まで待っても支持率は上がらないと踏んだのか、庶民院の解散総選挙に打って出た。フランスでは欧州議会でいわゆる極右勢力の伸長に反応して、マクロン大統領が国民議会を解散し選挙となった。

さて本題だが、選挙戦ではよくテレビ討論が大事だと言われる。黎明期に遡れば米民主党のケネディと共和党のニクソンが戦った1960年の大統領選では、テレビ移りをしっかり活用したケネディが優位に立ったと言われている。しかしテレビ討論は毎日やっているわけではない。各陣営は日々キャンペーンでしのぎを削っているわけだが、どうインパクトがあり候補者のポジティブなイメージを伝える映像、写真を撮らせるかが一つの焦点となる。

そこで支持者や有権者の声を聞き、支持を訴えるという体でいろんなところへ出かける。子供や動物など人が見たくなるような対象と絡めるのが一つの手だが、メディアはそこで撮れた「絵」を必ずしも好意的に使ってくれるわけではない。例えば今日の各紙一面を見てみる。

保守色の強い新聞は、王室関係者も出席する競馬(ロイヤルアスコット)の写真を使っている。話は逸れるが、ロイヤルアスコットは女性のファッション、特に派手な帽子のファッションが有名でフォトグラファーはそれを撮る。
 一方、リベラル系の各紙は、保守党のスナク首相が漁業関係者を訪ねた写真を使っているものの、漁船に乗ったスナク首相の写真とともに「All at sea?」(途方に暮れているというような意味)という見出しをつけている。野党労働党の優位が予測されているだけでなく、選挙戦が始まってから、右派ポピュリストとも称されるナイジェル・ファラージ氏率いるリフォームUKに支持層を侵食されているともされており、皮肉っているようだ。「i」は首相が羊に餌をやろうとするものの、羊の群れが一歩引いている様子の写真を使って、もっと直接的「餌をやろうとすると、スナクから羊が逃げる」と見出しを取っている。恐らく有権者を釣ろうといろんな施策を打ち出しても、有権者はそっぽを向いているという意味だろうか。
 経済紙のFTは、両手にロブスターの首相の写真とともに、選挙後の保守党を誰が率いるかを巡るレースが近づいて(政権の座から転落すると予想されているため)、有力者らが競っている、といった趣旨の見出しだ。ニュートラルな写真の使い方と言っていいかもしれない。

選挙戦もあと約2週間。結果はほぼ見えているものの、写真や映像を巡っても各陣営の戦いはまだまだ続く。

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