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一番最初に優しくしてくれたひと

右も左もわからなくて不安なときに優しくしてくれたひとのことを、人はぜったいに嫌いになれないと思う。

新しい環境で不安なとき最初に話しかけてくれたひとのことを、その状況を、内容を、いちいち鮮明に覚えている。
相手はもう忘れてしまっているかもしれないけれど、何年前のことになっても、どうしても忘れることができない。

小学校一年生、入学したてのころ背の順並びで近くになって、「私◯◯っていうの。お友達になろう?」って言ってくれたはるなちゃんとあいちゃんのこと。
六年生のとき、転入したての日本語補習校でどきどきしながら教室に入ったら、私の持っているバレリーナ柄のトートバッグを見て、「バレエ、習ってるの?」って話しかけてくれたうたちゃんのこと(私もうたちゃんも、バレエを習ってた)。
今の職場への異動が決まって挨拶にきたら、「楽しく仕事できるように僕らも頑張るから、あまり考えすぎずにこっちにおいでね」って言ってくれた先輩たちのこと。


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心理学用語で吊橋効果というものがあるということを知ったのはここ最近のことだ。
吊橋をわたるとか、ジェットコースターに乗るとか、そういうどきどきする環境で一緒にいたひとを、人はときめきと勘違いして好きになることがあるらしい。
好きになるからどきどきするのか、どきどきするから好きになるのか。
普通に考えたら前者でしょって思うけど、実際には後者である可能性の方が高いらしいのだ。感情が先、解釈は後。
人間の認知って、ふしぎだよね。

そしてそれを考えるたびに、吊橋やジェットコースターなんていうたいそうな状況じゃなくても、恋愛という状況でなくても、男女でなくても、それは起こりえるなぁと確信をもって思う。


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もうすぐ職場に、研修を終えた後輩が入ってくる。

いろんな人が私にとってそうだったように、私も誰かにとっての「不安なとき、そっとそばにいてくれたひと」になりたいと思う。

そして私は人生をかけて、そうやって一番最初に優しくしてくれたひとたちに恩を返していきたいと思う。
昔は双子みたいにずっと一緒にいたのに今はなんとなく疎遠になってしまったひとにも、空気みたいに当たり前になるくらいずっとずっとそばにいてくれるひとにも、等しくありがとうの気持ちを忘れないようにしたい。
特に後者って、感謝を忘れがちだよな。

やさしい人になりたい。もう二十年近く思っている気がする。
おやすみなさい。

これは私の感情のしおりです。






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