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【小説】幸せのカモ

「貧しい家に生まれたチルチルとミチルは、いつも近所のお金持ちの家のことをうらやましく思っていました。

ある日魔法使いのおばあさんから青い鳥を探すように頼まれ、探し出しますが青い鳥は見つかりません。

青い鳥を見つけるため、冒険の旅に出ることとなりました。」

幸せのモチーフには鳥が使われている。青い鳥や幸せを運ぶハト。鳥は幸せにしてくれるのだろうか。
不吉と言われるカラスもエジプトでもカラスは“太陽の鳥”と呼ばれている。

私の学校は川の近くにある。いつもカモを見ながら登校し、白鷺を見て下校する。そんなある日、道端にカモが一匹座っていた。周りには誰もいない。こっちをじっと見るそれは随分と動きが弱い。
どこか怪我をしているのだろうか。

野鳥って保護していいの?
たしかダメだったよね。いつも片手に持っているスマホで調べる。どうやら担当機関に連絡しないといけないらしい。
面倒だ。このまま見ないフリすることも出来る。
でも、このまま死んでしまったら…

仕方なく、ストールにカモを包む。機関に電話し対応を待つ。この辺って動物病院あるのかな。まさか、電車に乗って連れて帰らないといけないのかな。

最悪だ。
ここから数駅先にある動物病院に行かなければならない。どうやってこの子を抱えて乗るというのだ。ストールでぐるぐる巻きにして近くのコンビニでエコバックを買う。
可哀想だけど、顔が出ているのを確認してカバンに入れる。

病院に着くと、連絡が入っていたらしく看護師さんがすぐに対応してくれた。
運の良い事に、軽い衰弱状態だけで問題は無いらしい。この子が良くなるまで様子を見なければならない。
病院に預けるとこのまま保健所に連れていかれてしまうかも。鳥がどのような扱いになるのかわからないけれど拾った以上はどうにかしなければ。

こうして私とカモの共同生活が始まった。
その日から私は毎日学校帰りに寄り道せず帰るようになった。
私が帰る時間になると、まるで出迎えるように現れる。まだ飛べないようだ。早く良くなってほしい。今日は病院食を少し貰ってきた。
家に帰って食べさせるととても美味しいそうに食べる。可愛いものだ。

それからしばらく経った頃、もうすっかり元気になったようで飛ぶ練習を始めた。飛び方を忘れていただけのようだ。今では短い距離をバタバタと駆けている。そして、ついに飛べるようになった。嬉しかったのだろう。高く飛んでいく姿を見ていると涙が出てきた。

この子は野生に返すべきだ。私は病院と相談し、学校近くの川に放した。私の匂いが残らないように数日間、隔離しガラス越しのみの接触になった。

寂しさはある。でもこれが最善なのだろう。

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