【小説】お言葉
「『悪いことはしてはいけません。そして、もし、何かで失敗しても、 その失敗を糧にして次に成功すればいいのです。どんなにつらいことがあっても、その辛さを乗り越えれば、きっと幸せになれるはずですから。』」
「…………」
「『この世には、神様が与えてくださった試練というものがあります。それは、あなたにとって乗り越えるのが困難なものかもしれませんし、あるいは簡単なものなのかもしれません。でも、たとえどのような試練であったとしても、それは決して無駄にはならないでしょう。なぜなら、それがあなたの人生の財産となるからです。そして、もし仮に、困難や苦難があったとしても、それをすべて自分の力に変えられる人は、必ず成功することができるのです。だから、どうか諦めないでください。』」
「……」
「『この世の中には、どうしようもないほど不幸な人もいれば、反対に幸福すぎる人もいると思います。なぜそのような差が生まれるのか?おそらく、生まれつき運の良い人と、そうでない人がいるからではないでしょうか?』」
「……!」
「『でも、そんなことは関係ありません。大切なのは、自分が今置かれている状況の中で精一杯頑張ることなのです。そうすれば、いつかは必ず報われる日が来るはずです。努力した分だけ自分に返ってくるのです。だから、頑張ってください。』」
「……」
「『あなたは今までたくさんの辛い思いをしてきたのだと思います。だからもうこれ以上苦しまないでください。これからは、
僕は音声を切った。
このCDは僕のポストに入れられていた。何回も送られてくる全く身に覚えのないそれに僕は何故か異様に興味を持ってしまった。頭の中で色々な説を考える。ストーカー説、知り合いのイタズラ説。だが、結局答えは出なかった。
もう随分と使っていないラジカセを取りだし、CDをセットする。もしもの時にニュースを聞けるように買っておいたこれが役立つ時が来るなんて。
聞いて後悔した。なにかの宗教的な要素を感じる。
まるで信者に対して語りかけているような……。いや、まさか。そんなわけがない。まるで信者に対して語りかけているような……。いや、まさか。そんなわけがない。
でも、本当にそうなら? こんなメッセージを送り続けてくる理由とは一体何なんだ? その時、ピンポーンという音が鳴った。誰か来たらしい。急いで玄関に向かう。ドアを開けるとそこには1人の男が立っていた。男は僕を見るなり言った。
お気持ちは決まりましたか?
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