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「決め方」の科学-ボルダルール-

はじめに

慶應義塾大学の坂井豊貴先生の著書をもとに、昨今の政治状況を参考事例として扱いながら、「決定の方法」についての理解を深めていきたと思います。

この本では、決め方を経済学的に学ぶことができる本であり、難しい数式も登場することもない。多数決は本当に良い意思決定と呼べるのだろうか。このような疑問にも、様々な事例や角度から答えてくれます。このような疑問を一度でも持ったことがある方には、ぜひ一読を勧めたい、そんな一冊です。

本Noteの内容について、誤りがある場合、書籍に誤りがあるのではなく、私の理解不足、誤認識に基づくものかと思いますので、その点ご留意いただけますと幸いです。

ボルダルール

ボルダルール(Borda count, Borda Method)は、有権者が候補者の選好順序に従って候補者にランク付けをすることで、民意を反映させようとする方法。現行の方式では、5人の候補者がいても、1人にしか投票できない。2番手の候補者にも頑張ってほしいとき、どうすればよいでしょうか。投票用紙を半分にちぎって2人の名前を書くことはできません。有権者の選好は、グラデーションがあるにもかかわらず、白か黒かしか選べません。ボルダルールでは、1位に5点、2位に4点、3位に3点、4位に2点、5位に1点というように点数を配点することで、有権者の選好のグラデーションを点数化して反映します。この結果、有権者から広く支持される候補者が選定されます。例を通じてみていきます。

ここではAからFまでの6人の有権者がおり、aからcの3人の候補者が存在しているとします。多数決であれば、上表の1位の行を見て、1番得票している候補者を選ぶことになります。つまり、2位以下は考慮しないため、画像のように2位や3位の状態がわかりません。そして、この場合、当選するのは候補者aということになります。また、決選投票付き多数決であれば候補者aとcが選ばれ、決選投票に進むことになります。

ボルダルールではどうでしょうか。ボルダルールでは下表のように選好を順序づけて投票できる状態であり、その結果が得られていることを仮定します。そして、1位3点、2位2点、3位1点として配点し、合計点が評価基準となります。この場合、候補者bが当選することになります。

この表を注意深く見ると、どうやら候補者bは万人に受けそうな位置にいることがわかります。候補者aとcは有権者に好かれる場合もあれば嫌われることも多い、ということです。この点、候補者bさんは極端に好かれることもなく、嫌われることもない立ち位置であることがわかります。もう少し理屈っぽく説明すると、「候補者bさんは満場一致に1番近い候補者である」と表現できそうです。どういうことでしょうか。

説明のために下記の画像を用意しました。「満場一致に1番近い候補者である」状態というのは、「満場一致で1位になるためのコストが1番小さい」とも言いかえることができます。表の中段を例にすると、満場一致の条件は、候補者bが1位となる必要があります。そのため、各有権者の候補者bの位置から1位になるまで移動させます。この移動回数が小さい、つまり「満場一致で1位になるためのコストが1番小さい」ことになります。この例に限らず、ボルダルールでは、スコアが1番高い候補者の満場一致のためのコストは最小となります。

ボルダルールの理解を深めるために、いくつか例を紹介します。WikipediaのBorda Countの英語ページに面白い例が書かれていたので、お借りします。

テネシー州が州都の場所を決める仮想の選挙例です。人口は 4 つの主要都市に集中しており、すべての有権者は州都ができるだけ近くにあることを望んでいます。ボルダルールを採用し、投票した結果が下記のようになった場合、ナッシュビルが州都として選択されることになります。

ボルダルールではなく、決選投票付き多数決の事例も紹介します。直近だと、決選投票付き多数決は自民党総裁選2024で利用されていましたね。最初の多数決では高市さんがトップでしたが、決選投票付きなので、最終結果としては、石破さんが総裁として選ばれましたね。

ボルダルールでは、幅広く有権者から指示される必要があり、その結果として万人から高い配点を受けることになり、ボルダルールのもとで選出されます。自民党総裁選2024、ボルダルールが採用されていれば、未来は変わっていたのかもしれません。

おわりに

多数決なのか、決選投票付き多数決なのか、はたまたボルダルールなのか。「決め方」を少し変えるだけで結果が逆転してしまうことがわかりました。
このように、様々な決め方があり、多数決であれば、良い意思決定ができるというわかでもありません。民意とはなにか、その定義された民意の中で、どのような仕組みで「決める」のか。「決める」という行為は、簡単なようで非常に難しい問題だとわかります。

次回は、引き続き坂井先生の書籍を参考に「一騎打ち」について、書いていこうと思います。

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