運命の日
「森さんの荷物、持って行かないといけないんですけど。合鍵を預けているとのことで、森さんから聞いてます。」
数日前、タクマと喧嘩をしたサキ。
仲直りをせずに過ごしたので、
県外に居たのか、地元に居たのか、
それすらもわからなくなっていた。
そして、何を言われているのか、内容を理解するまでにとても時間がかかった。
森タクマは、ブライダル関係の仕事に就き、大阪の大きな会社に引き抜かれた経緯がある。
田舎の企業では貯蓄出来ないからと、大きな器を選択をしたあの日から5年は過ぎていた。
取引先へ、ウエディングドレスを載せ商用車で走る。
ほとんどの仕事を占めていた。
今回も例外ではなく、唯一例外とすれば、後輩に運転をまかせ、二人で行動をしていた時のこと。
大阪から四国への移動最中、垂水インターチェンジ手前の合流始まる頃。
最後尾の大型トラックから、6台巻き込む玉突き事故が発生。
トラックとトラックにはさまれ、小さな商用車は、大きな衝撃を受けていた。
森タクマは、意識はあり、慌てて連絡等をしていた。
後輩は運転席で意識も無くなっていた。
自分はしっかりしなければと必死だったに違いない。
この一連は、取引先だった四国の企業へ連絡が入り、森タクマからの伝言で、サキの元に繋がった。
本来なら、大阪住まいだったが、地元に残した母親が一年前に亡くなってから、地元での仮住まいと称して、母の荷物を引き取る場所として、つい最近借りたものだった。
長い付き合いで、母親のことも知っているサキは、タクマの部屋に置いた母の位牌に手を合わせに行くために、公には県内の唯一の友達として、合鍵を預かっていた。
入院するから荷物を集めて送ってほしい。
それがタクマからの伝言。
サキは、受けた電話の手が震えていた。
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