目に見えない自然法則を見た
●自然法則は目に見えない
枝から離れたリンゴが地面に落ちるのは自然の摂理。ニュートンの引力の法則に従って、人間の意思と関わらずに自ずとそうなる。
この世のすべての現象は自然法則が起こしているものである。
それが人知を越えた未知な現象であったとしても(たとえ心霊現象や超能力であったとしても)、人間がまだ理解していないだけの話であり、必ずそこには目に見えない自然法則が関わっている。
だが、目に見えない自然法則であっても、その法則に従って物質が形成された結果が残ることがある。ボクはそのような自然法則が残した形というものに惹かれ、長年撮ってきた。ある意味、ボクが写真活動をする理由の一つとも言える。
ここでは、「自然法則の残した結果」を見て自然の神秘を感じたい。
●積雪
雪が棒状のものに吹き付けて片側だけに積雪することがある。
ところがその棒状のものがツルツルした素材であると、雪の重みで滑り落ち、奇妙な形として残る。
●トンボロ(陸繋島)
高校の地理の授業でよく出てくるトンボロ。「江ノ島」が有名な例で、波の作用で砂が溜まり、近くの島と陸続きになる現象である。
ただ江ノ島は大きな島なので全体を見渡すことは難しく、ボクは比較的小さな島を写真に撮る。
洞爺湖珍古島では砂州を歩いて島内まで入ってみたのだが、面白いことに砂州の部分に小さな陸繋島があるのに気付いた。
これはまるでフラクタル幾何学のように、大きな構造は小さな構造から構成されていることを示す模式図のようにも見えて面白い。こういうところで数学が隠されているのかと驚いた。この写真を撮った時のボクの感動が分かるだろうか。
●ボルテックスリング
でんじろう先生の空気砲で有名なボルテックスリング。
たまに火山噴火で発生したものが撮影されて話題になったりする。発生源は何にせよ、煙の輪が形を崩れることなく遠くまで飛んでいくのは本当に不思議である。
ここでは、護衛艦の砲撃によるボルテックスリングを撮影してみた。
砲撃直後、「ん?何か輪っかが飛んでるような・・・?」とボーッと眺めていたが、「ボルテックスリングだ!」と気付いて慌ててシャッターを切った。
●ひび割れ
ひび割れというのは稲妻に似ていて、ほんのわずかな弱い部分を選んで破壊が進んでいく。そのラインを見ていくと、先に形成された割れ目に阻まれて次に形成された割れ目が止まっている様子が分かる。これを丹念に辿っていくと、このひび割れがどのようにして出来たのかが見えてきて面白い。
●浸食
ボクは昔から火星表面の写真を眺めて水流の跡を目で追い、かつての火星の様子を想像することが好きである。
実際に火星には行くことは出来ないが、それと同じ地形を地球上でも見ることが出来る。だから浸食地形を巡る旅は、ボクにとっては火星への旅と同じなのだ。
蔵王のお釜山頂では、雨水が集まって流れを作る最初の場所がある。ふだん川の源流を辿ることがあるが、ここは究極の源流と言える。ここで1滴の水を垂らせば、それが集まって大きな流れに加わる。この浸食地形を見れば、水が流れていない時であってもその様子が目に浮かぶようだ。
白水峡では、比較的低勾配の水の流れが表現されていて、広範囲に広がった水流の様子が見えてくるようだ。このような流れは火星表面でもよく見られる。
有珠山火口では浸食と堆積が一目で見渡せるいわゆる「模式図」になりそうな地形があちこちにあって面白い。
ガリー浸食はどこでも見られるが、興味深いのは、どこが谷になるのか、どこが山になるのかがほんのちょっとの違いによって決まるという点であろう。いったん谷が出来れば、そこに集中的に水流が集まり、どんどん削れて谷が深くなっていく。
他にも、下の写真のような水流跡の形状には、水の意思さえ感じられる。
●土柱
土柱というのは、降雨による浸食によって出来る地形である。
四国にある「阿波の土柱」が有名。
土柱が形成されるポイントとして、水流による浸食ではなく、雨滴が落下した打撃による浸食であるということである。そして、打撃に強い石などがあると、石が浸食を食い止めてそれ以上浸食されなくなり、他の浸食部分との差が開いていく。その結果、土柱が形成される。
モグラの土盛りは柔らかいため雨滴による浸食が進みやすく、小石が混ざっているとそことの差がハッキリ出て小さな土柱が出来上がる。
また、下のような写真では、ちょうど雨滴が当たらない部分があれば土柱と同じようにそこだけ浸食されずに残ってしまうことになる。風の影響の比較的少ない林の中などで出来やすい。
●溶解中の雪面
溶解中の雪面にも、何らかの選択的な作用が働いているようで、以下のように均一には溶けずに模様が現れる現象を目にする。
見た感じ、土汚れが網目状にあるが、この汚れ模様が最初に存在していて雪の溶け具合に影響しているのか、あるいは網目状に溶けることで結果的に土汚れがエッジに集積したのかは分からない。
●塗料の幾何学模様
塗装失敗のために溶剤が塗膜を侵している状態であるが、どういうメカニズムでこのような幾何学的模様が現れているのか全く不明。
ひび割れのようにランダムであれば納得出来るのだが、これはまるで何らかの知性がデザインしたかのようにしか見えない。
●雲
幼い頃、雲の存在が不思議でしょうがなかった。
なぜならば、ああいうものはいつか空で混ざって均一になってしまうものだと思っていたからだ。「なぜ局所的に白い塊が残ることができるんだろう??」と。
そんな雲も、風によって大きく形を変える。元々が自然に出来た雲であろうと、あるいは飛行機雲のように人工的に出来た雲であろうと、それが風によってデザインされると驚くような形に変わっていく。
●波紋
波紋というのは静かな水面では完璧な同心円を描いて広がっていく。
波は回折現象や干渉なども興味深いが、シンプルに同心円が形成される様子はやはり不思議に思う。そしてそこには確かに数学が潜んでいると改めて感じる。
●ポットホール(ドリルストーン)
ポットホール(甌穴-おうけつ)というのは、川の流れや波の作用によって、石が同じ場所で回転運動することによって角が削られ、丸くなりながら岩石を削っていくものである。
つまり、削った石(ドリルストーン)そのものは小さくなっていずれは流されて消えてしまい穴(ポットホール)だけが残るのが常である。
しかし伊豆の城ヶ崎海岸には、直径50cmくらいの巨大なドリルストーンが残っているポットホールがある。
この球体は見たところほぼ完全な形をしており、このようなものが自然に出来てしまうことに驚愕する。
●析出物
温泉地や石灰岩地形では、何らかの成分が析出しているところがある。
下の写真では登別の地獄谷で析出した温泉成分であるが、何らかの選択的要素によって小さな突起として析出が進んでいる。
●コケ
コケは日の当たらない部分に生えるというので方角を知るのに使われるようだが、ここでは木の切り株に生えたコケが面白いと思った。
木の外側から生えるのは何かの選択的要素があるのだろう。恐らく、木の皮の柔らかい部分がコケが生えやすいのではないかと思う。
●風が編んだ草
風が草を編むことがあるが、どの場所でも同じ形になっているのは興味深い。下の2枚の写真は、茨城と北海道のものだが、同じ作者が編んだとしか思えない。
●直線構造
有名なデザイナーであるルイジ・コラーニは、「自然界に直線は無い」と言ってエルゴノミクスデザインを多用していたが、自然界は数学で作られているのだから直線が無いはずが無い。
最初この地形を見た時、まるで土木工事で人為的に作られたものかと思ったほど。写真では小さく見えるが、かなりの大スケールでそこら辺のダムより大きい。
●亀?
生物由来の跡は自然の形と言うには微妙かも知れないが、亀の歩いた跡もなかなか面白いと思った。博物館に展示されている三葉虫が這った跡の生痕化石を見るかのようである。