きっかけのワイン
「きっとまだ見ぬ驚きのあるワインがあるんじゃないか。」
関心が高まってくると、そんなワインを自分の手で見つけ出したいという欲が出てくる。しかし、案外、偶然に頼る他は、そういうワインに出くわすことは難しいのかもしれない。
筆者がカリフォルニア・ワインに興味を持って調べ始めた頃は、白ワインと言えばシャルドネかソーヴィニヨン・ブラン、赤ワインならカベルネ・ソーヴィニヨンかジンファンデル、稀にピノ・ノワールというくらいで、選択肢は多くなかった。
そのせいか、しばしば代わり映えのしないシャルドネを飲む機会が続いてしまうこともあった。美味しいことに違いはないが、もうちょっと新鮮な驚きのあるワインがないものかと思ったことは一度や二度ではない。
そんな時、米国の小さなワインショップのサイトで、馴染みのない名前のワイナリーが推されている様子を見かけた。割に品揃えの良い店なのに、どうして名前もラベルも見慣れない生産者をここまで推しているんだろう?結局、気になって手に入れてみることにした。
そんなきっかけで出会ったワインのおかげで、カリフォルニアのシャルドネに強く惹きつけられることになるとは、当時は予想もしなかった。
Paul Lato氏は、ソムリエのキャリアを捨てて、裸一貫でカリフォルニアで自身のワイナリーの設立を目指していた頃に、Robert Parker Jr.氏に見出されて鮮烈なデビューを飾った。Santa Barbara地域を中心に優れた畑の果実を使用して、力がありつつもバランスの取れたワインをリリースしている。国内外ではPinot Noirが有名だが、Syrahの評価も極めて高い。現在は、Probonoという安価なラインの他、Napaの果実を使用したCabernet Sauvignonも作っている。
筆者が初めて購入したのは、Le SouvenirというSierra Madre vineyardの果実で作られたシャルドネだ。Robert Mondaviによって植樹されたというこの畑も、Paul Latoという生産者も、当時の筆者にとっては全く未知であったが、初めて飲んだときの鮮烈な印象は今でも覚えている。陽光と暖かさを感じる春に、都会から離れたコテージで迎える朝にぴったりの、爽やかで美しいワインだった。
「カリフォルニアのシャルドネって、こんなに美味しいのか。」
自分なりの基準を見出すことができたことで、カリフォルニアのシャルドネへの関心が高まっただけでなく、後のワイン探しにも大いに役に立った。
最近、縁があってまたLe Souvenirを入手することができたので、飲んでみることにした。
レモン、蜂蜜、グレープフルーツ、グアバ、パイナップルを中心に、僅かにヴァニラの豊かな香り。果実味は全くシャイではないが、強い酸があることでバランスよくまとまっている。アフターも長く、満足のいくシャルドネだ。今の好みから言うと、少し黄色系の味に転んではいるものの、初めて飲んだ時を思い出す味わいだ。
以前ほど飲む機会はなくなったが、今でも見かけると当時の鮮烈な印象を思い出す。そういうきっかけのワインに出会うことができたのは、幸運だったと思う。
本日のワイン:
Paul Lato Sierra Madre vinryardb Le Souvenir Chatdonnay 2013
93pts
https://www.paullatowines.com/
*Paul Latoは国内でも流通しており、レビュー動画は以下をご参照。
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