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人気と実力

どこの社会やコミュニティにも人気者というのはあるものだが、きちんとして実力のある人は、意外と目立たず静かに佇んでいるものだ。

先日、いわゆるカリフォルニア・ワイン好きが集うイベントに参加する機会があった。珍しい趣向で、各々がワインを一本持ち寄ることが参加条件となっていた。腕によりをかけて選んだワインを携えた参加者が集まり、ワインの話にも大いに花が咲いたので、会としては成功だったと思う。

多くの参加者がWSETやワインエキスパートといった資格を有していることもあってか、豪華なワインが机上に並んでいた。中でも、Kongsgaard Chardonnayは、乾杯の前に空になるほどの人気だった。鼻が利く人達が集っていたのだろう。

高級ワインがあれば無くなる前に飲んでみたいと思うのは人情だし、「乾杯は、やはりカリフォルニア・ワインの代名詞で。」という考えも頭をよぎったが、その時、隣にひっそりと佇んでいるあるワインに気がついた。

Flowers wineryは、WaltとJoan Flowers夫婦が今のFort Ross-Seaview AVAに畑を開墾し設立した。当初は、立地がワイン栽培に向かないとして周囲から止められていたそうだが、今や、カリフォルニアでも屈指のブルゴーニュ品種の名産地における草分け的な存在となっている。なお、現在はQuintessaを所有しているHuneeus vintnersに買収され、ポートフォリオの一部に収まっている

FlowersにはCamp Meeting RidgeやSea View Ridgeといった上級キュヴェもあるが、今回、スタンダード・キュベにあたるSonoma coast Chardonnayを飲んで、改めて優れた生産者であることを実感した。

シトラス、白桃、ライム、白い花を中心とした華やかな香り。Flowersというだけある。瑞々しい酸とミネラル。微かに樽の存在を感じる。ピュアな味わいも果実味は充実しており、ミッドパレットからフィニッシュにかけて満足感がある。飲み終えた後に、思わず「美味い。」と呟いてしまった。

後になって振り返ってみると、その後に飲んだKongsgaard Chardonnayも美味しかったが、Flowersの方が強く印象に残っている。知名度と品質は必ずしも比例しないが、ワインを適切に吟味するということは難しいものだ。

Flowersのワインは、日本で長く流通している。その割に知名度が高まらない理由は、高級ワインの入門としては価格が高いため、手が出し辛いからだろう。加えて、流通量が多く、「あって当たり前」の存在になってしまい、希少価値が高まらないことも一因に思われる。

とはいえ、いつでも手に取った人を笑顔にしてくれるワインというのは、人気者よりも貴重なのかもしれない。

Flowers winery Sonoma coast Chardonnay 2022
93pts
https://www.flowerswinery.com

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