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ピーター・ティールも投資。デジタルコンテンツ版Amazonを目指す「Whop」とは
こんにちは!
Z Venture Capitalでコマース領域を担当している内丸です。
みなさん、オンラインでモノを買うときに、どのようなサービスを使いますか?
本・日用品・雑貨ならAmazon/ 楽天市場/ Yahoo!ショッピング、アパレルならZOZOや各ブランドのECサイトなど、商材毎に使い分けている方も多いのではないかと思います。
それでは”物理的なモノ”ではなく、”デジタルなモノ”ではいかがでしょうか?
デジタルなモノ(以下、デジタルコンテンツ)と言われてもあまりイメージできないかもしれませんが、例えばオンライン授業・オンラインサロン、デジタルアート、ワークフローテンプレートまで多岐にわたります。
デジタルコンテンツを買うことが一般的ではないことが原因かもしれませんが、「どこでデジタルコンテンツを買いますか?」と問われてもパッと思いつかないと思います。
デジタルコンテンツの世界では、まだAmazon・アリババなどの圧倒的な勝者がいないのです。
※後述しますが、既にユニコーン・上場している大手プレイヤーはいます
この点に目を付けたのが、本noteで取り上げる「Whop」です。
Whopは、デジタルコンテンツ領域におけるAmazonを目指しており、2023年7月のシリーズAラウンドにおいて、評価額$100Mでピーター・ティールやInsight Partnersなどから$17Mを調達しています。
今回は、ピーター・ティールも注目する「Whop」を解体しつつ、デジタルコンテンツ×コマースの世界を覗き見していきたいと思います!
デジタルコンテンツ×コマースの競争環境
冒頭で記載した通り、デジタルコンテンツを売買するためのサービスは、これまでも全く存在しなかった訳ではなく既に様々なサービスがあります。
ゲームであれば「Steam」、オンライン学習であれば「Udemy」が非常に有名で、バーティカル領域で特化した大手のプレイヤーは既にいます。
また、2010年代頃からは「クリエイターエコノミー」というキーワードが流行り、クリエイターが自身のコンテンツをサブスク型で販売できるプラットフォーム・サービスが数多く台頭します。
その1つが「Patreon」であり、評価額 40億ドル越えのユニコーン企業となりました。Patreonの大躍進から停滞までの経緯は下記のnoteでまとめていますので、興味のある方は是非とも一読下さい。
クリエイター×バーティカル領域で、急成長したスタートアップは他にもあります。
オンライン学習に特化した「Teachable」はプラットフォームを立ち上げて以降急成長を遂げ、2020年にHotmartに2.5億ドルで買収されています。
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同じくオンライン学習に強みを持つプラットフォーム「Kajabi」は、驚異的な成長を遂げており、2023年にはこれまでのGMV総額が50億ドルを超え、直近の年間GMVが17億ドルに達したと報告されています。
文章コンテンツであれば、a16zから資金調達し、日本でもユーザーが多い「Substack」などが代表的なスタートアップです。
「SamCart」はクリエイターが簡単にデジタルコンテンツを販売できるECを構築できる”デジタルコンテンツ版Shopify”を提供しています。同社は、VCから資金調達せずに長年サービスを伸ばした後に、$83Mの資金調達を行っています。
クリエイターエコノミーの空白地帯
このように華々しく成長しているスタートアップが数多く存在する一方で、クリエイターエコノミーには根本的な課題があります。
それは富が一部のトップクリエイターに集中し、ほとんどのクリエイターが生活費を稼ぐこともできないということです。
そのため、先ほど紹介したPatreon等のKey Success Factor (KSF)は「トップクリエイターを囲い込むこと」になってしまっているのです。
言い換えると、Amazonは「プラットフォームとしての集客力を持つため、Amazonの集客力を求めて出品者が集まっている」一方で、Patreon等は「トップクリエイターの集客力に依存しており、Patreon等のプラットフォームとしての力は弱い」状態です。
結果的に、Amazonがロングテール型のサービスとして発展できましたが、Patreon等はべき乗則(Power Law)型のサービスとして発展してきました。
ものすごく大雑把にプロットすると下記のような図になり、デジタルコンテンツ×プラットフォーム主導のセグメントに空白があるのがクリエイターエコノミーの現在地なのです。
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この空白地帯のメインプレイヤーになることを目指しているのが、「Whop」です。
Whopとは
サービス設計
Whopはデジタルコンテンツのマーケットプレイスであり、販売されている商品は、スポーツやギャンブルの予想、ビジネス情報、ショッピングのお得な情報、ソフトウエアツールまで多岐に渡ります。
他のクリエイターエコノミー系サービスがクリエイターの集客力に頼った設計にしているのとは真逆の思想で、Whopはプロダクト内で新たな発見を楽しめるように設計されています。
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またWhopは、出品者側にとっても痒い所に手が届くプロダクト機能やサービスを提供しています。
①デジタルコンテンツならではの特化機能
デジタルコンテンツに特化したことにより、クリエイターがコンテンツを販売するにあたって求める細かい要求にも対応しています。
例えば、
・自身が運営するDiscordコミュニティと連携し、メンバーの管理を容易にしています。
・ソフトウエアを販売する際に、そのライセンスキーの管理や承認が簡単に行えるようにしています。
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②手厚いサポート
Whopは、クリエイター向けに手厚いサポートも行っています。
消費者が購入した製品に不満や疑問がある場合の窓口として、カスタマーサポートを設けて、余計な問い合わせがクリエイターにいかないように配慮しています。
また、Whop上でアクティブなサブスクリプションが1つ以上あるクリエイターには、専任のアカウントマネージャーがおり、機能リクエスト/ バグレポートの提供のみならず、日々の相談も気軽にできる体制を構築しています。
③CRM機能
大量に流入してくるユーザーの管理・分析ができるCRMツールもWhopは提供しています。
Google Analytics/ Meta Pixel/ Twitter Pixel/ Pinterest Pixel/ TikTok Pixelと連携させることで、プロモーションの結果・分析ができるダッシュボードも用意されています。
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④ユーザー認証機能
違法なスパムやボットが顧客になるのを防ぐため、Whopでは、登録したすべての新規ユーザーのソーシャルアカウントを自動的に検証し、”本物の人間”であることを確認しています。また、商品を購入する前にSMS認証を要求する等、クリエイターのニーズに合わせた追加認証も設定することができます。
ビジネスモデル
売上の方法によってテイクレートが異なるビジネスモデルを採用しており、マーケットプレイス上で販売された場合のテイクレートは30%です。
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実績
2021年3月のサービス開始以来、Whopは急速に売上を伸ばしており、直近の月次GMVは1,180万ドル、約100万人の顧客と3,000人の販売者を抱えるマーケットプレイスとなっているとのことです。
おわりに
Whopは今後どのように成長していくのでしょうか?
ロングテール型のサービスを目指すのであれば、Amazonが初期的に本のセグメントで圧倒的にSKUを集めたのと同じように、Whopに出店してくれるクリエイターをとにかく増やすことが重要になります。
Yahoo!ショッピングが出店者を集めるために実施した「eコマース革命」のように売上手数料をゼロにする施策も効果的かもしれません。
また、Whopがリリース直後にソーシャルメディア上で口コミで広がったようにバイラル施策も効果的だと思います。
とにかくAmazonのようなマーケットプレイスを作るには、お金が時間がかかるものです。
今後のWhopのチャレンジを注視していきたいと思います。
また、日本で同様のチャレンジをしたい方ともお話させて頂きたいです!
Twitter:https://twitter.com/Uchimaru_ZVC
Facebook:https://www.facebook.com/kinmemai
どうぞよろしくお願いします!
参考資料