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フィレンツェに燃える

花組全国ツアー公演を拝見しました。
とんでもなく久しぶりに感想など覚え書してみようと思います。リハビリです。
今の時代はすごい!現地に行けなくても配信がある!
ということで、前半の神奈川の配信と、後半の愛知公演を見てきました!
私の自由な感想なので、よろしくお願いします!


47年ぶり初の再演

さて、この『フィレンツェに燃える』は柴田侑宏先生の初期の作品で、芸術選奨新人賞を受賞した作品とのこと。
柴田先生といえば、私は『琥珀色の雨にぬれて』『哀しみのコルドバ』の印象が深く、まさに後に生まれるこれらの名作の原点のような物語でした。
要所要所に覚えのあるフレーズや展開があったりと、ああ柴田先生の作品なんだなという感じました。
今回の上演はなんと、47年ぶりの再演とのことで演出の先生を始め、初演に携わっていた方はいない状況で実現したそうです。

知らぬはずの当時の空気を感じる

初めて見終わった時の感想はこれは宝塚の古典だ!でした。
古典と表現したのは、まるでベルサイユのばらの世界に来たようだと思ったからです。
主題歌であったり、台詞回しや、見せ方の様式美など、私が知る中で何度も上演されてきた“宝塚の古典”であるベルばらを思わせました。
ベルばらが影響していたのか、互いに影響し合っていたのか、当時の演出方法の主流がこういった型だったのかもしれない!と思い至りました。
一大ブームを巻き起こした初演ベルサイユのばらが1974年月組で、翌1975年に花組で上演されています。ちょうどその間に上演されたのが『フィレンツェに燃える』だったそうです。
音声のみで映像資料がほとんど残っていなかったそうですから、今回の再演にあたって動きの型など『ベルサイユのばら』等を参考にし、当時の作品の空気を再現しようとしたのかも!と考えました。
47年経っているからこそタイムカプセルを開けたように当時の空気を感じられるような表現にしたのかもしれないな、と勝手に思いました。

愛の二面性とは

柴田先生が今作で描きたかったテーマが"愛の二面性"。
それって何?二面性って??
めちゃめちゃいろんなことを考えながら見ました。
とにかくみんなハッピー!!という作品も楽しいですが、どんより哀しみのままでたくさん考察しながら見る作品も楽しいです。
アントニオ、レオナルド、パメラ、アンジェラ、オテロ、マチルド、レナート、ルチア、カルロ、ロベルト、ヴィットリオ、マッダレーナ、バルタザール侯爵…etc。登場人物は皆が皆それぞれに愛を持っています。
恋人への愛、家族への愛、母国への愛。
皆が愛に生きようとしても上手く行かないのですね…。

イタリア統一運動と貴族

この愛のテーマの主軸はもちろん、パメラを中心に、トニオ、ナルド、アンジェラ、そこにオテロが加わって進んでいく愛なのですが、私が惹かれたのが、時代が変わる中での貴族の在り方に悩むレオナルドを中心にしたバルタザール家の愛です。
フランス革命の後、イタリアもまた貴族に反発する市民運動からイタリア統一運動へと発展していたようです。歴史詳しくなくて申し訳ないのですが…。
貴族であるバルタザール家の子息が統一運動(革命)など、ありえない!わかります、お父様の気持ち。先祖から受け継いできたこの家を守ることが貴族の誇り。そうやって生きてきた人。
我々には誇りより大切なものはないのか?
ない、とはっきり言い切った父。
市民の犠牲の上に成り立つ貴族の在り方なんておかしい!と、それまでとはまったく別の視点を持ったナルドは大人に成ろうとしていたし、父にとっては未知の脅威だったのではと思います。
だから自分の意志を継いで家を守ろうとしてくれるアントニオを頼ったし、レオナルドを拒んだ。
でも、ナルドは自分を理解してほしいと望んだし、父を愛していた、愛されたかった。自分は兄のようには成れないのに、父は兄の手しか取らない。怒って飛び出して行ってしまうナルドですが、どんなに拒まれても、お父さんを裏切れない…。と、仲間と一緒に踏み出すことはできませんでした。

似た者同士

はい、何を隠そう私、バルタザール侯爵に心惹かれてしまいました。お父様!!
こんなに分かり会えない父と次男坊ですが、実は若い頃の旦那様に気性がそっくりということを執事のカルロに暴露されてしまい、居心地悪く父は出て行ってしまう、というちょっぴりほんわかした空気でシーンが終わります。好きです。
それを踏まえて見返すと、幕開きの夜会のシーンが違ったように見えてきました。
イタズラ坊主のナルドが元歌姫に一曲披露してもらいたいと願い出るところ。
悪気なく言っているように私は感じたのですが、トニオに止められ「そうですか?」と。それから「お父さんも不賛成ですか?」と父へお伺いに行きます。ここで私が見たときは気まずそうに目を反らしていたお父様たったのですが、実は楽しそうにパメラを元歌姫だと皆に紹介していたのは他でもないお父様なのですよね。それから、義兄の結婚生活のことなど話してトニオに、失礼ですよと嗜められる。「そうかな?」ん?ん??一緒だ!全然悪気なく失礼なこと言ってる。しかも、お父様めちゃめちゃ楽しいこと好きでしょ?本当はお父様も大賛成だったでしょ??と愛おしくなりました。

毎日生きてるお芝居

私は同じ作品を複数回見るということをあまりしたことがなかったのですが、今回経験して驚いたことがありました。それは皆お芝居が毎日違うということです。
何度も観劇される方には当たり前のことだったかもしれません。映像で同じ回を見るばかりの私は毎回皆さんが違う動きをしていることを恥ずかしながら初めて知りました。登場人物それぞれ生きていると感じました。
例えば、幕開きの夜会では貴族の面々がいつも自由に会話を楽しんでいますし、酒場のシーンでは酔っ払い客たちは踊ったり絡んたり、毎日それぞれに生きていました。
主要人物でさえ心の動きも毎日違いました。上記のナルドの「そうですか?」1つとっても、全く悪気なく言っていたり、既に兄の心がパメラに向いているのが分かり少し不機嫌そうだったり。その後も憲兵の到着で統一運動派のナルドは警戒して様子を伺っている日、パメラを追う兄に気づきじっと見つめる日。
中でも客席を楽しませてくれたのは夜会が終わり兄弟で話すシーンではないでしょうか?ある日のナルドはどっしりと座ってちょっと強がってみたり、ある時は肩にもたれて甘えてみたり、足を下ろすように注意されたり、褒められてドギマギしていたり、素直に喜んでいたり。仲良し兄弟なのが伝わってきます。お互いに強く思い合って、強い絆で結ばれているんだなとか、父から貰えなかった愛を兄から一心に受けているんだな、とか頬笑ましく思っていたのも束の間。愛が強すぎて、悲劇が始まってしまうこの残酷さ…。

トニオとパメラとナルドとマッダレーナ

お父様と喧嘩して飛び出していったナルドは行きつけのカフェへ、その頃トニオは既に心の中に棲んでいるパメラと打ち解け合います(?)。
ナルドにはバレバレでしたけど、パメラも自分が想われてること知っていたのでしょうか?パメラが本物の悪女かどうか答えは出ませんが、このシーンでは初めて自分自身を見てくれたトニオに心から喜んでいたように思えました。あー、『琥珀色の雨にぬれて』のシャロンだ…。貴女は純粋で美しいと盲目に恋する男と、本来の自分でようやく愛せた人を住む世界が違うと手放す女。柴田先生!!
一方カフェでは酔っ払いの皆さんが今日も自由に酔っ払っていらっしゃいました。
統一運動一直線のロベルトと父カルロの素直になれない関係も良いです。家族愛。ロベルトの方が大人ですね。
私が大好きになってしまったのが、カフェの女性たちのまとめ役マッダレーナです。お歌がとてもステキとかは置いておいて。新人イジメなんてしない大人な女性だけど、ナルドにだけは触ったら許さないって!可愛らしい!イジらしい!こんな女性にヤキモチ妬かれちゃう程愛されてたら、ナルドもお兄様に俺の女アピールしてしまいますよね!!惚気〜。
珍しく下町にお出かけの若様のウキウキとした様子にいち早く気がついて自分も嬉しそうなナルド。とても素晴らしいことがあった、自分は彼女と一緒になることを決めたと、彼女本人でもなく一番に弟に伝えたかったトニオ。お互い誰より大切に思い合っているのに…ここから歯車がめちゃくちゃに狂ってしまう!ナルドの決心が皆をバラバラにしてしまう…。
「マッダレーナ!酒だ!」
と呼びかけたナルドは、ある時は店のお客さん皆にどんどん飲んで!と気前よく散財してみたり、ツラそうにグラスを一気に煽ったり、日によって違うようでしたが、受けたショックとこれからすることの決心をヤケ酒で流し込もうとしているようでした。ツラい。

今宵一夜〜(かなり主観)

ナルドが仕掛けます。いつわりの恋を。
彼女は兄さんに相応しくない、それを兄さんに証明するため、赦されない行動に出ます。大切な兄さんを守るためなら、自分が一生赦されなくてもいいと、一世一代の芝居を打った…筈でした。
ほら見てみろ、こういう女なんだ。
トニオに見せつけます。
責めたり怒ったりせずただ一言「どうして?」と絞り出すように問うトニオ。
幸せだったはずなのに、なぜ彼女が別の男と、なぜ弟のレオナルドと…?ショックの大きさは計り知れません。
パメラはというと、すべてを諦めてしまったようでした。やっと見つけた真実の愛も、自分がどんな人間か強い強い想いで諭されて手放してしまった。自分は彼に価しない人間だと思い知らされた。でもトニオを心から愛している、というのが溢れる涙から、二人の辛い表情から伝わってきます。
そこは二人だけの世界。
違う展開など赦さないと言うようなナルドの鋭い視線も、愛し合う二人の姿をまざまざと見せつけられて、一人混乱し始めます。
思い通りの展開になったのにナルドの表情もまたとても辛そうなのでした。

恋はいつから?

いくら兄さんの目を覚まさせる為とはいえ、何故なのナルド…。
そのぶっ飛んだ発想と行動力に目が離せません。彼の行動原理や思考が気になって仕方ない。
兄を破滅させる女、彼女に向けるのは憎しみの筈でした。
ひと目見たときにどんな女かわかった。
それは既に愛し始めていたから?
レオナルド自身も混乱したままパメラに惹かれるのを止められません。心が転がり落ちてくみたい。
"私は"ですが、恋になってしまったのはトニオのために身を引いた、本当に兄を愛している姿を目の当たりにした時かと思いました。自分が仕掛けた思い通りの展開になったはずなのに、もしかして彼女は兄さんの真心に価する人間だったのかもしれない、後悔が彼を襲ったと思いました。同時に強く惹かれた。
そしてカーニバルでのトニオとの決別を目の当たりにして、彼女への想いが決定的になった。彼女は兄さんの真心に価する人だった…。そしてすべてを捨て二人で生きていこうと決心するほど彼女を愛した。


中断

待ってください。頭の中のもの全部吐き出そうとすると永遠に終わりません。ダメだ、まとめられない!!
残す文章が書けない…いつでもそうだけど…。
もう、点で書く!見づらくてごめんなさい!

アンジェラとトニオとパメラ

私が見た前半と後半で明らかに演出が異なっている箇所がありました。
カーニバルでのトニオとパメラの再開です。
カーニバルの何日目か、トニオがアンジェラと約束どおり二人の時間を楽しんで心が癒やされてきた頃。
トニオの心はパメラにあると知っているアンジェラは、トニオにパメラと行くよう促します。(彼に自分かパメラどちらかを選ぶように迫る跳ねっ返り。)
・前半
するとトニオは心のままにパメラの手を取り、愛しているやり直したいという想いが溢れるようでした。しかし、パメラは目を合わせず「私には、連れがおります」涙。ツラい。本当は同じ気持ちだよと痛いほど伝わります。
あー、琥珀だ。フランソワーズの私の前で私を通り越した会話をするのはやめて!!だ。
・後半
二人は視線を交わします。パメラは否と静かに首を振る。トニオは動きません。凛として「私には、連れがおります」トニオは小さく頭を下げこれが永遠の別れと決意しているようでした。そしてアンジェラを選ぶ。既に別れを決意していた。
私は後半の方が好きでした。大人の対応。

アンジェラとルチアとレナートとお母様

この後、娘の事は母親が一番良く分かっているお母様が見抜けなかった次女アンジェラの婚約者レナートと長女ルチアの相思相愛が発覚し会場は笑顔。そして三女セレーナのカワイイひとことで悲しい物語の中で唯一と言っていいほどの癒やしの時間でした。
こちらも事実発覚してから再度見ると、まだアンジェラの婚約者として登場するレナートのシーンでもルチアはそわそわしていたり、嬉しそうだったり。この頃から好きだったのだね、と発見があり面白かったです。

オテロとマチルド

オテロ…恋人のマチルドを潜入捜査に使ったり、パメラへの執着もバレていたりと酷い男ですが。マチルドには彼が全てだったんですね。幸せになれないだろうこともわかっていたはずなのに、彼のために動くしかなかった。少しの幸せな未来に賭けたんですね。悲しみの叫びのような歌声…ツラい。

レオナルドとオテロと決闘

すべてを捨ててでもパメラと生きようと決心したレオナルド。地獄まで共にすると言ったパメラ。たとえパメラが罪を犯していたとしても、自らも同じ罪を背負って生きようとしたレオナルドの深い愛情。
しかし、オテロの殺してでもパメラを連れて行こうとする執念も一方的だけど強い愛情。
そして訪れる悲劇。心が張り裂けてしまったレオナルドの悲痛な叫びがあまりに悲しかった。
最後の時パメラは何を思っていたのかな…。

レオナルドとパメラ

レオナルドはパメラを同類だと言った。
生まれ育ちが全く違う二人が同類?とも思ったけど、きっと生き方の問題なんですね。
自分は決して綺麗には生きられない。誰からも尊敬されて、愛されて、非の打ち所がない素晴らしい人=アントニオのように生きられない。
愛していたけど同時に劣等感がずっとあったと思う。そのままの自分でいいと言われても、当の本人は認められなかった。
兄が眩しかったと思う。そして自分は日陰の存在と。
パメラにも自分と同じものを重ねて、相応しくないと決めつけた。
パメラもそれは分かっていて、愛を信じたかったけど自分は釣り合わないと心の何処かでは思っていた。だから身を引いた。
二人にとってアントニオは穢してはならないとても神聖な存在だったのだと思いました。
だからやっぱり似た者同士だったのかな?
でもね、アントニオもまた弟を眩しく思っていたし、陰なんて気にならない程彼女を愛していたんだよね。

バルタザール家

レオナルドは屋敷へ戻り、すぐイタリア統一運動へ発つことに。家族との別れはバルタザール家の次男に戻り、心配になるくらい涙を零していました。次会うときは敵味方。それが人生…。あー、また琥珀だ、ミッシェルだ。
そして、待ってましたお父様!!
「私たちは家族ではなかったかな?」
家族!!そうナルドもお父さんにとってずっと大切な家族だったんです。絶対反対だった統一運動への出立も、息子の門出と特別なワインでサルーテ…!!涙止まりません。
ナルドもお父さんのことが一番心配だと思う。
「お父さん!!」涙いっぱいの呼びかけに、振り返らずスッと上げた右手。
言葉無しでこんな、別れの、こんな、手だけで全てが語れることあります!?
お父さん!!!客席で心がいっぱいいっぱいでした。
兄弟だけのラストシーン。
「パメラのことは…」
「何も言わなくていい。」
えっ言わなくていいの?となりましたが、パメラを失った悲しみに暮れている弟を見たら、何が起こったのか分かったのかな。
トニオはパメラを手放してしまったことを後悔していた。そうしたら多くを失わずに済んだかもしれないから。
パメラはもう戻らないのだけど、誰かにこの兄弟を救って欲しかった。

最後に、一人旅立つレオナルドが、パメラへの愛と、不変の兄の愛と、実はずっとそばにあった父の愛を胸に、どうか強く生き抜いてくれますように。



悲しいのです。
感想を書きたかったはずなのに、おおよそ思い描いていたのとは別のものになってしまいました。
もっとちゃんと感想言えるようになりたいです。
舞台はすこぶる楽しかったです!表現できてない!
読んでくださった方ありがとうございました。

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