タイトルに騙された/『早く家へ帰りたい』高階杞一
初めて詩集を読んだ。
2週間前に初めて世界一の古書店街といわれる神保町へ行ってきました。
「絶対に1冊だけ、普段買わなそうな本を買って帰ろう」と決めていた。
半日、神保町の街をふらふらした私が最後に手にした本がこれだった。
『早く家へ帰りたい』高階杞一
家は“うち”と読みます。
「はやくうちへかえりたい」です。
買った理由は2つ。
①装丁が良かった。
全体が布地の様な素材で、題名の文字と表紙のイラストの部分は黒い糸で縫われたようなデザインになっている。
ピンクの表紙も、縦糸と横糸を交互にストライプしたようになってる。
触り心地も良き。柔らかい雰囲気が良き。
②タイトルと中身のギャップにやられた
タイトル(題名)をふと見た時に思ったことは、「あ、なんかゆるそうなカワイイ本」
手触りも良くて、ふと中身をチラ見。
〈うん…違った。ごめんなさい。〉
私はそっと本棚に戻しました。
その後数時間は神保町の街をフラフラしながら、古書へ対する自分の知識不足を痛感しながら、
結局1冊も購入しないまま、
ずっと頭の片隅にあったこの本を購入しました。
やっぱりタイトルと表紙のイラストのゆるさと反する内容の重そうさが頭から離れていませんでした。
〈しかもこの本の子供の実名が私の親友と同じ名前で漢字も同じとは…〉
買う運命だと思ってレジに持って行きました。
・・・
初めての詩集は帰りの電車であっという間に読み終わった。
私は電車なんかで読むもんじゃなかったと、メガネの奥で潤んだ目を誰もにバレない様に静かに閉じた。
読み終わるまでの時間はこんなに短いのに、こんなにも儚い気持ちにさせられるのかという感動を覚えました。
これは実話です。
生まれてすぐ病気に苛まれたその子は約4年半で息を引き取りました。
亡くなる前から亡くなってしまった後にかけて、
著者でありお父さんである高階さん自身の心の中の葛藤、我が子を失う寂しさや苦しさ、命の儚さと子供の尊さ。
それら全てが混ざり合っている様を文章から感じさせていただきました。
私にはまだ子供はいませんが、いつか子供ができた時に読み返したらきっと全く違う重みがかんじられるのではないかなと。
心の底にいつまでも閉まっておきたい一冊になりました。
P.S.
こちらの本の出版社は夏葉社(なつはしゃ)。
恥ずかしながら、初めて聞く名前だったので検索してみると
「何度も、読み返される本を。」
というスローガンが出てきた。
何度も読み返されたら新しい本が売れないから売上いかなそうと捻くれた感想が出て、その後すぐ後悔した。
この記事を見て、この出版社が好きになった。
本書のこだわった装丁も夏葉社だからこそだったのか、と気づいた。
まんまと買わされていた私はしっかりと狙いの顧客だったとも思い知った。