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ゆっくり進む時間の中で【WISC処理速度】

「あっちの電車、早いね。」
私たちの各駅電車が急行に追い越され、娘が呟きました。
「こっちの電車、止まっちゃった。」
その瞳には、速く走る電車への憧れが映っていました。

「そうだね、あっちはずいぶん早いね」
私は答えました。
そして、静かに続けました。
「でも、こっちの電車もゆっくりと進んでるよ。」

急行と各停 あなたはどちらですか?

その言葉を口にしながら、私は思わず自分自身を見つめ直しました。
私の人生もまた、この各駅電車のようなものです。

急行列車のように、瞬く間に目標に到達する人、
各駅停車のように、ゆっくりと一歩ずつ進む人。
私は、どちらかというと後者
――各駅停車の人生を歩んでいるな、と改めて感じました。

その時、ふと浮かんだこと。
急行列車の速さに焦りを感じることなく、各駅停車でしか味わえない景色や出会いを大切にしたい。

今日は、皆さんと一緒に「人生の処理速度」について考えてみたいと思います。



マイペースの正体は処理速度

「啓はマイペースだから。」
昔から動きのトロい私は周りによく言われました。
マイペースな子どもたちは、周りのペースに合わせることが難しいです。
1歩遅れて自分のペースでコツコツとやることが多いです。

例えば、授業中にノートをとるスピードが遅いです。
課題の提出が他の子よりも遅れることがあります。
そのようなマイペースの正体。
それはウィスクでいう「処理速度」の低さです。
ウィスク(WISC)で測定すると、処理速度の値が低いことが多いのです。

WISCは、子どもの知的能力を測る検査です。
その中に「処理速度」という指標があります。
処理速度は、視覚情報を素早く理解し、効率的に処理する能力を示します。
この能力は、学習や日常生活のさまざまな場面で重要です。
特に、時間制限のある課題や、複数の情報を素早く扱う際に影響します。

処理速度が他の知能指数よりも低い場合、いくつかの困難が生じることがあります。ここでは、その三つの特徴について説明します。


マイペースのリスク

【学習スピードの遅さ】

処理速度が遅いと、情報を理解し、次に進むまでに時間がかかります。これにより、授業の進行についていけず、内容を十分に理解できないまま次に進むことがあります。

具体例: 例えば、先生が黒板に書いた内容をノートに書き写す際、他の子どもはすぐに終わりますが、処理速度が遅い子どもはまだ書き終わらず、次の説明を聞き逃してしまうことがあります。

対策: このような子どもには、授業中の時間を多めに設定したり、ノートを簡略化したりする工夫が有効です。また、テストや課題において時間制限を緩和することも役立ちます。

【コミュニケーションの遅さ】

処理速度が遅いと、会話中に相手の話を理解し、自分の考えを整理して答えるのに時間がかかります。これにより、会話のテンポについていけず、コミュニケーションが円滑に進まないことがあります。

具体例: クラスでのディスカッション中、他の子どもたちは次々と意見を述べますが、処理速度が遅い子どもは考えがまとまるのに時間がかかり、発言のタイミングを逃してしまいます。

対策: このような子どもには、少し時間を与えて考える機会を提供することが有効です。また、ペアワークや少人数での会話練習を行い、発言しやすい環境を整えることも重要です。

【自己評価の低さ】

処理速度の遅さにより、子どもは自分が他の子どもたちよりも劣っていると感じ、自信を失うことがあります。これが続くと、自己評価が低下し、学習意欲や挑戦する意欲が減るリスクがあります。

具体例: 例えば、テストやグループ活動で、他の子どもたちが速く作業を終える中、自分だけが遅れていると感じることで、「自分はできない」と思い込んでしまうことがあります。

対策: 自己評価を高めるためには、子どもが成功体験を積めるような環境を作ることが大切です。例えば、得意な分野での活動を増やし、自信を持たせる機会を提供することが有効です。小さな成果を積み重ね、少しずつ自己評価を高めるサポートが必要です。


凸凹処理速度の副作用

このようにWISKの処理速度が低いと様々なリスクが高まります。
しかし、さらに深刻なのはウィスクの項目の中で、言語理解や知覚推理の能力が高い一方で、処理速度やワーキングメモリが低いという「凸凹」が存在することです。
これにより、理解はできても答えられないジレンマが生じます。

例えば、授業中に問題の解き方を理解していても、他の子が次々に答える中で、自分だけが「反応が遅れて」苦しむことがあります。

「わかっているのにできない」という現象は、子どもにとって大きな精神的葛藤を生みます。
自分が他の子どもたちと同じようにできないことで、劣等感や無力感を抱くことが多いです。
その結果、自己評価が低下してしまうこともあります。
こうした葛藤を抱えつつ、自分のペースで進むことが求められます。

そのような子を救うのが正しい「マイペース」です。
自分のペースで進むことで得られる経験や発見が、人生を豊かにしてくれるのです。

 各駅停車のメリット

各駅停車の人には、そのスピードだからこそ発揮できる特技や魅力があります。
急行列車のようにスピーディーに動けない人でも、じっくりと時間をかけて物事に取り組むことで、他の人にはできない成果を上げられます。

例えば、細かい作業や緻密な計画が必要な仕事では、各駅停車のペースが効果的です。
工芸や手芸、園芸など、細かな手作業が求められる仕事や趣味においては、急がず一つひとつの工程を丁寧に進めることが、質の高い結果をもたらします。
研究や分析のように、データをじっくり検討する仕事にも向いています。
一つのテーマに深く掘り下げる力は、急いで結果を出そうとする人にはない深みを生み出します。
勉強でも、ゆっくりと理解を深めるスタイルが効果を発揮します。
一夜漬けのような速攻型の勉強ではなく、日々コツコツと積み重ねることで、確実な知識と理解が身につきます。
また、読書や資料の整理など、一見スローな活動も、長期的には大きな成果を生むことが多いです。

働き方においても、各駅停車の人はサポート役や裏方に向いています。
急速な変化に対応するよりも、安定した環境で着実に仕事をこなすことが得意です。
例えば、プロジェクトの進行管理や品質チェック、データの精査など、ミスを避けるポジションで力を発揮します。
各駅停車のペースは、人との交流にも豊かさをもたらします。
急がずに相手の話をじっくり聞くことで、深い信頼関係を築くことができます。
これにより、仕事やプライベートで、強固で安定した人間関係を築けるのです。

このように各駅停車の人たちは、自分のペースで進むことで、周囲が見逃す価値ある瞬間を捉え、人生を豊かにできるのです。


自分の旅を楽しめるスピードで

自分が心地よいスピードはどれくらいですか?

人生は、一人ひとりが異なる列車に乗っている旅のようなものです。
急行列車で早く目的地に着く人もいれば、各駅停車でゆっくりと進む人もいます。
重要なのは、自分がどの列車に乗っているかではなく、旅をどう楽しむかです。
それぞれのペースで進むことに価値があるのです。
各駅停車で進むことで見える景色、出会う人々、感じる瞬間の豊かさは、急行列車では得られないものです。
その旅の中で、周囲が見逃すような小さな喜びや発見を見つけられるのは、あなただけです。
自分の旅を誇りに思い、その歩みを楽しむ勇気を持ちたい。

私も他人と比較し劣等感を抱いてしまったときはすぐに唱えます。
「各駅、各駅、出発進行。」
自分のペースを大切にし、自分だけの旅を楽しむことが、幸せな人生切符だと信じて。


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