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【名盤伝説】”Paul McCartney and Wings / Red Rose Speedway”
お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。ポール・マッカートニーのウィングス名義でのアルバム1973年リリースの『レッド・ローズ・スピードウェイ』です。
ウィングス名義の前作『ワイルド・ライフ』(1971年リリース)のセールスが低調だったため、名義にポールの名前を冠するべしとのレコード会社の判断から、この作品から「ポール・マッカートニー&ウィングス」となったのだそうです。
正直この前作は私の趣味ではないので特に評することはしませんが、ビートルズ時代に作れなかった作風で、色々とチャレンジしたいポールの気持ちは理解できます。名前だけの問題ではないのかなという気がしますけど・・・。
ウィングスのメンバーは、ポールとリンダ以外にはデニー・レイン(G)、デニー・シーウェル(Drs)、ヘンリー・マカロック(G)の面々ということになります。
世間の不評の波を払拭するかのようにメンバーはライブを繰り返し、バンドとしての一体感を強めていきます。そしてレコーデイングも並行して行われ、アルバムとしての曲が整い1973年4月に『レッド・ローズ…』がリリースされます。
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収録曲
A1 Big Barn Bed
A2 My Love
A3 Get On The Right Thing
A4 One More Kiss
A5 Little Lamb Dragonfly
B1 Single Pigeon
B2 When The Night
B3 Loup (1st Indian On The Moon)
B4 Medley:
Hold Me Tight
Lazy Dynamite
Hands Of Love
Power Cut
先行シングルとなった「マイ・ラヴ」が大ヒット。その勢いのままアルバムもUSチャートで3週連続1位を記録。UKチャートでも最高位5位を獲得しています。
アルバムトップのA1。ミディアム・テンポながもグイグイとくるリズムが期待感を煽ります。ウィングスの特徴でもあるポールとリンダの絶妙(微妙^^;;)なコーラスも絶好調。この曲はアルバム『ラム』セッションからの蔵出し曲だそうです。
長閑でカントリー・フレイヴァーなA4。メロディ・メイカーとしてのポールの本領発揮というところでしょうか。
メドレーのB4。湧き上がる様々なアイデアの粒を繋ぎ合わせてメドレーに仕上げる・・・まさにポールの職人技ですね。練り上げられたアルバム・ラストに相応してナンバーです。
この時期のポールの創作意欲はかなりのもので、前々作『ラム』からのアウトテイクを含めて30曲ほどのストックがあったと言われています。それらを当初は2LPでリリースしようとポールは考えていたようですが、これまたレコード会社の意向で1LPでのリリースとなったようです。幻の2LPの曲順で『レッド・ローズ…』リリース50周年記念BOXに特典CDが収録されています。その曲順はこちらです。
LP-1
Side A
A1 Night Out
A2 Get On The Right Thing
A3Country Dreamer
A4 Big Barn Bed
A5 My Love
Side B
B1 Single Pigeon
B2 When The Night
B3 Seaside Woman (Linda)
B4 I Lie Around (Denny Laine) → Singl : Live and Let Die (Side-B)
B5 The Mess [Live At The Hague] → Singl : My Love (Side B)
LP-2
Side C
C1 Best Friend [Live In Antwerp]
C2 Loup (1st Indian On The Moon)
C3 Medley
a) Hold Me Tight
b) Lazy Dynamite
c) Hands Of Love
d) Power Cut
Side D
D1 Mama’s Little Girl
D2 I Would Only Smile (Denny Laine)
D3 One More Kiss
D4 Tragedy
D5 Little Lamb Dragonfly
太字は実際に収録されたナンバー。一部入れ替えはあるものの、ほぼ順通りにスリム化されたことが知れます。B4やB5のように後のシングルのカップリングとして日の目を見た楽曲もあります。そしてお蔵入りした曲は・・・。正直この判断はレコード会社に軍配をあげたいですね。この2LPのままリリースされていたら『ワイルド・ライフ』の二の舞になっていたように思います。
趣味は様々なのでご自由に捉えていただければ良いのですが、個人的には音の厚みというか質感が整った曲が採用されたという感想です。バンドとしての一体感も大切ですが、所詮「ポール &」 の設えは致し方ないかなと思うのです。だってポールですよ・・・その名前の偉大さは一生付いて回らざるを得ないと思います。
さて、バンドとしての一体感を求めてギグを繰り返してきたおかげで、名義はともかくもネクスト・ビートルズの居場所を見つけたポールの生き生きとした姿が映像として記録されていました。この時期のポールが好きな私にとっては夢のような映像です。
この時期のポールは、まるで発情期を迎えた動物ような熱い創作意欲を発散し、ヒット曲を連発していきます。
名曲「マイ・ラヴ」を収録しているにもかかわらず、あまり話題に登りませんが、収録曲を厳選した甲斐あって良い曲が揃った、まとまりのある質の高いアルバムだと感じています。完全にネクスト・モードに移行したポール。これを契機にソロ・ミュージシャンとして絶頂期を迎えることになります。
ビートルズ解散(1970年)以降の4人のソロ活動についての記事をまとめています。宜しければどうぞお立ち寄りください。