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【名盤伝説】”Paul and Linda McCartney / Ram”

お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。ビートルズの解散宣言から約一年後の1971年5月にリリースされた、ポール・マッカートニー(リンダと共同名義)のソロ2作目のアルバム『ラム』です。

ビートルズのラスト・アルバム『レット・イット・ビー』の発売(1970年5月8日)直前に解散を宣言し(4月10日)、自身の初ソロ『マッカートニー I』をリリース(4月17日)したポール。解散宣言だけでも衝撃的なのに、そのあまりに策略的な活動に批判が集中します。「ビートルズは俺がいたから…」その気持ちは分からないでもないですが、でも本当はそうじゃないというのはポール自身もよく分かっていたうえでの行動だったのかなと慮ります。

ビートルズの実質ラストアルバム『アビー・ロード』を驚異的な日程で作り上げる中で、もうバンドは終わるとの暗黙の了解の中、ポールだけでなく、ジョンもジョージも次の展開に備えていました。

最初にカタチにしたのはジョージで、解散宣言のその年の11月に3LPの大作を発表します。

ジョンは7月にはシングル盤を、ジョージを追うようにヨーコとの共同名義?プラスティック・オノ・バンドとして12月にアルバム『ジョンの魂 (邦題)』をリリースします。

そしてポールは1970年の10月からNYで新作アルバムのセッションを始め、その中でレコーディングした「アナザー・デイ」を71年2月にシングルとしてリリースします。

レコーディングはポールとリンダ以外には、NYの実力派セッション・ギタリストだったデヴィッド・スピノザ(G)とヒュー・マクラッケン(G)。後にウィングスのメンバーになるデニー・シーウェル(Drs)らが参加しています。1971年に入りミックスを終えて5月にアルバムがリリースされます。

UKチャートでは2週連続の1位、USチャートで2位を獲得しトップ10に24週もランクインするなと大ヒットとなりました。いかに元ビートルズはいえ、話題性だけではここまでのセールスは成し得ないと思います。見え透いた蔵出し作品集でもなく、やっつけで作った訳でもなく、本当に新しく、ちゃんと作り込まれた良いアルバムだと思います。

収録曲
A1 Too Many People
A2 3 Legs
A3 Ram On
A4 Dear Boy
A5 Uncle Albert / Admiral Halsey
A6 Smile Away
B1 Heart Of The Country
B2 Monkberry Moon Delight
B3 Eat At Home
B4 Long Haired Lady
B5 Ram On
B6 The Back Seat Of My Car

アルバムトップのA1。ポール自身も、この曲はジョンへのメッセージだと語っています。ジョンとヨーコの社会的な活動に対して「Too many peaple preaching practice」(あまりに多くの人々が、どうしろこうしろと説いている)、「お前らなんかに説教される謂れはない」と。ジョンの社会的な影響力の大きさを認めたうえでのメッセージです。

ジャケットから想起されるポールお得意のカントリー・ファームで牧歌的な作品集かと思いきや、いきなり痛烈なメッセージ・ソングからのスタートでした。


シングルカットされたA5。名盤『アビー・ロード』のB面で見せた小作を繋いでドラマチックな展開に仕上げる、ポールの職人技が発揮された作品。ソロとして初のUSチャートで1位を獲得。


アルバムラストのB6。ギターのアルペジオから始まる感動的な展開の曲。ポールらしさが全面に出ているように感じます。今後のソロ活動に期待が高まります。実はビートルズ時代の蔵出しらしいです。


ジョンとポールの批判合戦はマスコミの格好の餌食となります。解散から未だ間がないとはいえ、正直二人とも大人気なくて何だかなぁって感じです。この辺りの事情を、こちらのnoterさんが丁寧に記事にされていました。
https://note.com/todakamasahiro/n/n0c54a38c1e44

意識するなとは言いませんが、お互い好きな道を進めば良いのにと思いますけどね。とはいえソロになっても切磋琢磨する二人の天才ミュージシャンの作品には、当時やはり目が離せなませんでした。


ビートルズ関係の記事をこちらでまとめています。どうぞお立ち寄りください。




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