【名盤伝説】”Wings / Venus and Mars”
お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。ポール・マッカトニー率いるウィングス名義でリリースされた『ヴィーナス・アンド・マース』(1975)です。
前作『バンド・オン・ザ・ラン』(1973年12月リリース)の大成功を期にライブ活動を意識したバンド編成を目論むポールでした。
新たなメンバーとしてドラマーのジェフ・ブリントンに続き、スコットランド出身のジミー・マカロック(G)の参加が決まり、新生ウィングスの活動が始まります。リハーサルはUSナッシュビルで行われることとなり、カントリー好きのポールにとっては充実の日々を過ごせたのでしょう。この時期にレコーディングされたナンバーは「ジュニアズ・ファーム」としてシングル・リリースされます。
新作アルバムのレコーデイングはUSニューオリンズで行われる予定だったようです。デキシーランド・ジャズ発祥の地でカントリー・テイストに溢れた作品を目論んでいたのかなと推測されますが、メンバーのビザの都合でロンドンのアビーロード・スタジオに変更されてしまいます。
1974年8月には「One Hand Clapping」としてバンドのレパートリー固めのためのセッションが始まります。ようやくバンドとしての形が見えてきたポールの安堵感は半端なかったのでしょう。そこに見るポールの活き活きとした笑顔は実に印象的です。
11月には新作アルバムに向けての本格的なレコーディングが始まりますが、75年になるとまたもやバンドの危機、メンバーのジェフが脱退を申し出て急遽ジョー・イングリッシュの参加が決まります。ま、色々な思いがあるのでしょう。バンドってある意味色々会って面倒ですね。でもソロよりもお互いの音楽性を刺激し合う時間が長いだけあって、メンバーの意気が合えば、その創造力は凄いのですけどね・・・相手がポールですからそこは厳しいのかもしれませんけれど。
その後スタジオをUSニューオリンズ~LAと移してトラック作りが進み、最後はロンドンでフィニッシュ、1975年5月に無事に新作アルバムがリリースされます。
新作アルバムのタイトルは『ヴィーナス・アンド・マース』となりました。当時のSFブームから名付けられたとのことですが、火星と木星、占星術では情熱とやる気を意味する火星と、拡大と発展を意味する木星。また別の意味として男性と女性の象徴とか、何やら意味深でオカルトチックな雰囲気も漂います。ジャケット・デザインはリンダの写真をもとにヒプノシスの手によるもの。アート・ワークとしても秀逸ですね。
前作ヒットの勢いのままUS・UKチャートともに1位を獲得。USでは予約だけで200万枚を超え流という過熱ぶり。その期待に応えて十分なアルバムに仕上がっていると思います。
タイトル曲のA1。A2へのメドレーは当にロック・コンサートのオープニングに最適です。このメドレー、今聞いても燃えます^^。
ヴギ・ウギ調のA5。アメリカン・コミックがモチーフで、コミック原作とは設定が違うとのこと。どこかコミカルで楽しい雰囲気のナンバーです。
シングルカットされたB5。アルバムセールスとともに好評価でUSチャート1位の大ヒット。ほのぼのとした曲調とメロディのポップさは、いかにもポールらしいナンバーです。
アルバムラストを飾るスロー・テンポのバラードB6。熱狂のロック・ショーの後のクール・ダウンにふさわしいと思います。でも実際のライブでは演奏された記録が無いそうです。このアルバムの全曲再現コンサートを観たいなと思っていましたが、もう絶対に実現不可能の夢の夢ですかね。
前作の『バンド…』でも感じられたアルバム通してのトータル感は、この新作でもぷんぷんしています。楽曲をメドレーで繋いだりクロスフェードしたり、リプライズがあったりと、それだけでも雰囲気は出てきますがw、ライブを意識したアルバム作りだということは間違いないでしょう。当時のポールはコンサートしたくて仕方がなかったのだと思います。
そんな思いを込めてツアーが待ち遠しいポールですが、その話はまた別の記事で。
ビートルズ解散(1970年)以降の4人のソロ活動についての記事をまとめています。よろしければどうぞお立ち寄りください。
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