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クラウドストレージのメリット・デメリット

今回はクラウドストレージに絞って、そのメリット・デメリットをご紹介したいと思います。弊社は可能な限りバックアップ作業およびその管理をオフラインで行うこととしており、それによりネット経由での情報漏洩やランサムウェアなどの脅威が及ばないところで作業ができることをアピールしておりますが、決してクラウドストレージに対して否定的なわけではありません。その理由についてもお話しできればと思っております。

クラウドストレージのメリット

  • 容量が無制限

以前はクラウドストレージといえば容量の壁がつきまとうものであったのですが、最近のクラウドストレージは容量無制限ということを謳っているサービスが多くなってまいりました
そうなりますと、とりあえず利用しているデータは全部クラウドに上げてしまって、ローカルに置いておくものは最小限にしておこう、という利用の仕方がまず考えられます。利用し始めるときには扱っているデータを全部アップロードしないといけないということになりますので、通信回線の速度を考えるとちょっとした労働ですが、一旦それを済ませてしまえば使い勝手はよいでしょう。

  • ネット環境があればどこででも利用可能

クラウドストレージのメリットと言えば、まずこのことをお考えになる方が多いのではないでしょうか。いまやネットは日本の領土全土をカバーすると言ってもよいほどに広い範囲で利用できるものになっております。利用できない場所と言えば海上ぐらいでしょうか。私は最近北海道から沖縄までをほぼ船旅だけで日本縦断する旅行動画を見たのですが、さすがに海の上まではネットはカバーし切れていないようです。
まあそれはともかく、そういったネットワークが日本国中を覆い、そしてまたスマートフォンという小型にして高性能なネット端末をひとりが1台ずつ持ち歩くという状況になっていると言ってもいい中、ネット環境があればデータがいつでもどこでも使えるというのは利便性の良さは際立っています(利用のしやすさのことをこういった文脈ですと「可用性」と言うことが多いので以降はそう致します)。

  • 端末を選ばない

かつてはWindowsの上でMS-Officeを動かすというのがオフィスワーカーにとってデファクト・スタンダードな環境でしたが、現在はGoogleから提供されているGoogle Workspaceを利用することによりブラウザがあればそれ以上の費用を必要とせずクラウドサービスとしてかつてのOfficeっぽいものはすべて無料で利用できるようになりました
実はMicrosoftも無料のMicrosoft 365 Onlineというものを提供してはいるのですが、Word、Excel、PowerPointに限られておりますし、どうも使い勝手的にMicrosoftはPCの前にドカッと腰を据えて、という使い方から脱却し切れていないように思います。
(ちなみにひとつ情報をご提供申し上げますが、電子内容証明郵便を送るにはMicrosoftのWordが必須となっています。Microsoft 365 OnlineのWordでもダメで、残念ながら購入したWordが必須となります。電子内容証明郵便のヘビーユーザーと言えば弁護士の先生方かと思うのですが、これについては今のところ諦めるしかなさそうです)。
Google Workspaceであれば、例えばこの文章のような長い文章を、スマートフォンで打ち込むというようなことも、膨大な手間はかかるでしょうが不可能ではありません。

  • ファイルを利用したいときに、探さなくて済む

私が個人用として利用しているPCには、ざっと17TBのHDD・SSDを積んでいます。それだけのデータをバッチリストックしているわけではなく、システムドライブ、データドライブと分けまして、さらにオリジナルとバックアップという形に分けて、さらにさらにデータの種類別に分けております。これもまあ情報セキュリティの強化および向上に資するためにやっていることなのですが、これだけやってNASは立ててない。ひとり暮らしですからねえ。NASはいいかという感じです。個人ユーザーのためのバックアップの取り方もいずれはお話ししましょうランサムウェア対策にもなるかなと思っています。
さてさて話がちょっと脱線しましたが、何を申し上げたいかと言うと、他のどれにも分類できない「その他データ」のドライブの中がもうグッチャグチャだということなんです。久しぶりにあのファイルが見たいなというようなときには、まず探すところから始めなくてはいけません。結局、Web検索した方が早かったりします。
こうして自分では整理しているようでもだんだんとグチャグチャになってくるのがローカルのドライブだと思います。その点、クラウドストレージは容量の制限というのを考える必要がありませんから、ザックリとディレクトリさえ分けておけば、欲しいときにそこから持って来て、更新したらまた保存しておけばよい。便利な使い方ができるというわけですね。この点もクラウドの長所と言えるでしょう。
クラウドの長所と言えるのは、まあこの程度かなと思います。

クラウドストレージのデメリット

  • サイバー攻撃を受ける可能性がある

クラウドの最大の弱点はここにあるでしょう。クラウドを利用することはそもそもバックアップからのスタートだったはずなのに、いつの間にか可用性の方が重要視されてしまっていて、なんのためにクラウドを使うことに決めたのかが案外おろそかになっています。
以前、クラウドストレージ提供会社がデータを失った件についてお話を致しました。あの時は事故によって失われた例についてお話を致しましたが、クラウドストレージ提供会社だってネットユーザーには違いありません。サイバー攻撃によってダメージを受けることが100%あり得ないかと言えば断言はできません
サイバー攻撃とひと口に言いましても、明らかに「やられた!」とわかるランサムウェアなどではなく、盗聴・内容の改竄など気付きにくいこともあるかと思います。こういったことが、知らないうちに進んでいるのはある意味すぐにやられたとわかるリスクよりも恐ろしいかもわかりません。

  • 情報事故の際に、ロールバックする地点がわかりにくい

これも以前にお話ししたことではありますが、クラウドストレージは多くの場合複数のユーザーがクラウドにアップされている数多くのファイルを各々に利用し、保存するということが前提にされていることが多いです。要するに「何年何月何日何時何分においてこの状態であった」という時点がほぼ特定できないのです。そうなってきますと、複数のファイルにまたがるようなデータが、例えば一致していなければいけないのに一致していないとか、そういった不都合も生じてきます。やはり、数ヶ月に1回でもいいので完全に全ユーザーの操作を止めてバックアップを行うことが望ましいと思われます。

  • 誤操作も同時にバックアップされてしまう

これも以前にお話ししたことではあるのですが、ローカルの操作とクラウドバックアップを同期している場合、誤って削除したり変更したりといった操作がなされてしまうと、バックアップも同じ状態になってしまいます。やはり同期していないバックアップも必要ということになるかと思います。

すみません文字数が文字数になってきたので以降簡単にいきますがクラウドストレージのデメリットは他にも

  • 負荷が大きい

  • 電力サージや停電の影響を受ける可能性がある

  • 管理コストが高い

  • データ消失の際に責任の所在が明らかでない

  • 安全性が低い

  • 信頼性が低い

  • リストアが困難

というようなデメリットがございます。

バックアップの3-2-1ルール

いずれ稿を改めてお話ししようとは思っておりますが、バックアップの3-2-1ルールというものがあります。オリジナルの他に違う媒体2種類に同じデータを保存しておき、そのうち1種類は遠隔地に置いておくという、アメリカ国土安全保障省の配下に設置されたセキュリティ組織「US-CERT」が2012年に提唱し、今では優れたバックアップ手法の考え方として広く受け入れられている考え方です。
1つはローカル、1つはクラウド、1つは弊社の遠隔地バックアップサービスということでご利用いただければと考えております。
よろしくお願いいたします。

小括

やはりできる限り分散を行っておくというのがバックアップの要諦であるかと思います。弊社では将来的にバックアップ用の記録媒体の制作や海外拠点の設置まで考えておりますが、現在のところクラウドやHDD・SSD、場合によってはテープ媒体など駆使しながらなるべくいろいろな方法でいろいろな場所に保管しておくというのが最善の対策のようです。

余談

あまり関係ないのですがちょっと触れたので書いておきますと、クラウドで使えるビジネス用ソフトに関しては完全にGoogleがMicrosoftの先を行ってしまった感がありますね。Windows11が非常にバックアップしづらい仕様になってしまったため各所から反感を買っておりますが、IntelのCPUにも不具合が見つかっておりますし、かつてのWintel帝国が揺らぎ始め、Googleが攻勢に出た気が致します。ChromeOS Flexといういわば「ジャブ」も出ていますし、ここしばらくはIT業界は流動的になりそうな気が致します。

目次

クラウドストレージが持つ特有のリスク

クラウドストレージが持つ特有の脆弱性

クラウドストレージと遠隔地バックアップの相互補完性

クラウドストレージのデータ消失に関する責任の所在

ディザスタリカバリ手順をあらかじめ決めておくべき理由

弊社でお取り扱いしておりますデータ・OSにつきまして

Microsoftさん、それはないでしょう

事業継続計画の立て方 その1

Windowsからの乗り換え先になるか? Linux MintとChrome OS Flex

事業継続計画の立て方 その2

事業継続計画の立て方 その2 の注釈

事業継続計画の立て方 その3

パソコンのデータが飛ぶ5つのケース

BitLockerをいろいろ使ってみました

事業継続計画の立て方 その4

パソコンのデータが飛んだ際のリスク10選

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