過去の大罪
犯してはいけない罪がある。
同棲相手に貸していた借金を詰め、母親に返させたとかならいいのだが、もっと別の出来事。
その女性は優花と言った。
出会いは掲示板。彼女には彼氏がおり、しかしどこか寂しさを感じていることから出会いを求めていた。
俺は当時再上京して好きにやれてたし、とにかく遊びまくっていた。
毎日違う女の子とデートして、毎日違う人と体を重なる事にもなれ、そんな中でも大切にしたいと思う1人ではあった。
だが、彼女は当時18から19になったばかり。金銭的な負担や将来の不安も大きかったのに、どこか俺は気づいてあげられなかった。
同じ掲示板に書き込んで別の相手を探していた時に連絡が来て、なぜまだ使っているのかと言われた。俺はしらばっくれた。
その後、彼女とまた会う事になり家の鍵を渡したが心は離れ、彼女はぼろぼろになっていた。
そして、俺と敵対関係に。掲示板で悪口を書き込んだり、荒れだした。
あまりにも酷く警察に被害届を出したら、彼女はそれに傷ついたのか、ぱったりやめた。
その後、池袋のデリヘルで働いていることを知り、時は流れホストと客として対峙した。
その時彼女はすでに壊れて、ケタケタ笑う人形のようになっていた。
誰も不気味さを感じていないのは、彼女の過去を知らないから。
無垢で、可愛く、プレゼントした服を着てくれて六本木の交差点を歩きクリスマスを過ごしたあの時期のことを。
秋葉原からの帰りの電車で似た女性を見かけ、どこか懐かしくなった。
思い出させてくれてありがとう。
その電車の彼女は、病的に脚が細かった。
隣に座るのを彼女は一瞬躊躇い、そして浅く座った。どこか気づいて欲しかったのだろうか。
ただ一つ言えるのは、彼女も独りだということ。
俺は長く生きて女性を相手にすることで、どこか浮いた人を見分けれるようになっていた。
渋谷で降りた時に見た彼女の横顔は、どこか儚げでそれでいて力強かった。
隣で眠る彼女を、守ってあげたい気持ちになったのは久しぶりのこと。
だが、声はかけなかった。
それはきっと、そのうち過去を話さなければならないから。
重ねている限り、まっすぐは愛せない存在になる。
さよなら、一瞬でも大切な気持ちを想い出させてくれてありがとう。
薬を、断ち切って生きて欲しい。