◯◯で保育士をしていました
本日もみなさんとのご縁に感謝。
たかはしです。
今回は、私が20代の頃に就いていた仕事について、その「周知」も兼ねて書くことにしました。
世の中には多種多様な仕事があり、それぞれの価値観をもって選択していると思います。私の場合は、自分自身の幼少期のある経験を機に、疑問を抱き、辿り着いたのが、とある仕事でした。そしていつしか、その仕事に就くことが私の夢となりました。
「病院」で保育士をしていました
◆子どもの権利を守りたい
突然ですが、みなさんは「子どもの権利条約」というものをご存知でしょうか。私は中学校の授業で習った記憶があります。
「子どもの権利条約」とは、18歳未満のすべての子どもの基本的人権を国際的に保障しているもので、1989年に国連で採択されたのち、日本は1994年に批准しました。条約は前文と54条から構成され、以下の4つの基本原則が示されています。
先にも述べたように、この権利条約はすべての子どもが対象ですので、性別や人種、障がいの有無、国籍や家庭環境などにかかわらず、条約の権利は平等に適用されます。中学生ながら、「子どもという立場を守るために、こんな条約があるんだな」としみじみ考えたことを覚えています。
一方、生まれつきの疾患をもつ姉が入院していた病院では、そんな権利も何もないような景色をみていました。
複数名で一部屋に入院する大部屋。退屈そうに転がる小学生。片手には点滴が繋がっているため不自由そうでした。もっと小さい子どもは、ただただ泣いていることが多く、付添う母親も疲弊している様子。そして、適切な説明がなく怯えながら手術室に向かった姉の姿も、強烈に記憶しています。
私はこの状況に「子どもの権利って…」と、強い違和感を覚えました。そして「この状況がすべてなのか?」と疑問を抱いていました。その後いろいろと調べていく中で「医療保育」という言葉に出会ったのです。
◆医療保育
医療保育とは、入院や治療を受ける子どもたちの心と体を支える保育活動や心理的支援のこと。入院中の子どもたちは、病気の治療だけでなく、常に心理的なストレスにも晒されています。医療行為そのものが痛みや恐怖を伴うことはもちろん、入院生活によって家族や友人と離れる孤独感も感じやすくなります。さらに、医療行為が適切に説明されず、ただ「怖い」「痛い」といった印象を持つ子どもも少なくありません。
「自分が受ける治療がどんなものか」「この後どんなことをされるのか」、大人に対しては十分説明がされる医療。しかし、子どもに対してとなると「子どもに説明してもわからないよね」「パッと終わらせた方が騒がなくていい」など、当たり前にそんな考え方がまだ存在しているのが現実です。
一方、日本でも先進的な医療現場では、「子どもの権利を守るため」に専門職を配置し、子どもに関わる全ての職種が『子どもファースト』の医療を提供しようと努力を重ねています。遊びや対話を通じて不安やストレスを軽減し、医療行為への恐怖を和らげるとともに、治療一つ一つをそれぞれの発達段階に合わせて、様々なツールを使いながら事前に説明するのです。
この役割を日本で担っている方の特集を見つけ、「この仕事をしたい!」そう心に決めたのは、高校2年生の頃でした。
◆働く
病院で働く「保育士」の枠は、まだまだ日本では少なく就職活動はスムーズではありませんでしたが、とにかく「夢を叶える!」ために必死でした。「募集があればどこでも行きます!」という気持ちでしたが、ありがたいことに私の住む地域の中核的な総合病院で働くことが決まりました。医療保育士としては第一号だったため、業務内容すべて0から生み出す役割でしたので、とにかく毎日が必死でした。
「医師」「看護師」をはじめ、様々な職種が入り混じる医療現場で、新しい職種としてアピールすることの大変さを痛感しながらも、「子どもの権利」を伝え続けました。「子どもの笑顔をまもるために…」と、懸命に働いたことは、今でも人生の糧になっています。
◆医療保育専門士
日本ではこのような役割を果たす専門職として、「医療保育専門士」が近年確立されつつあります。やはり医療という特殊な現場で働くには、一般的な保育・教育の知識だけでは太刀打ちできません。そのため医療に特化した保育士としての知識やスキルを備えた人材育成を目的として、学会認定でこの資格が取得できるようになりました。私もこの資格を取得しましたが、この学びが非常に現場業務に役立ちました。
ただ、まだまだ日本ではその資格取得者数は少なく、医療現場における子どものケアが十分整備されているとは言えません。多くの病院には院内学級が設置されていますが、それは主に義務教育年齢の子どもが対象です。幼児や義務教育未満の子どもたちへの支援は万全ではないのが現状です。
◆CLS・HPS
海外では、チャイルドライフスペシャリスト(CLS)やホスピタルプレイスペシャリスト(HPS)という専門職が確立しています。CLSは北米で発展し、入院や治療に伴うストレスを軽減するため遊びや教育を通じて子どもの心理的ケアを行います。また医療行為の事前説明(プレパレーション)を行い、子どもが治療を理解し安心できる環境を提供します。HPSはイギリスやオーストラリアで確立され、遊びを中心とした活動を通じて子どもの不安を和らげ、医療行為への適応を支援します。どちらも医療チームの一員として、子どもや家族へのサポートを行い、治療と成長を両立できる環境作りを担う重要な役割を果たしています。
日本の病院でも、CLSやHPSの資格を取得した日本人が活躍されいる現場もあり、少しずつではありますが日本の医療現場も「子どもの権利」への理解が浸透してきていると感じます。
◆子どもの権利を守り、未来をつなぐ
日本でも「医療保育」の概念がさらに拡充し、小児医療現場において「子どもの権利」が当たり前に守られる社会となることを、現場を離れた今も切に願うのです。この記事を読んでいただいた方が、マイノリティな世界に少しでも関心をよせていただければいいなと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。