《小説》 破壊の大樹 (プロローグ)
10年前に死んだじいちゃんと話したことを思い出す
3歳だった僕がおっかなびっくり病室に入ると
たくさんのチューブがあやとりみたいに
うねうねとじいちゃんの体にからまっていたんだ
僕に気づくとベッドの上で骸骨みたいなじいちゃんが笑って
「優介か……」
消え入るような声で呼びかけてくれた
優介「元気になった?」
「……なるわけねえだろ、なりてえけどな」
優介「お医者さんきっと……良くなるって」
「リップサービスだよ馬鹿、気づけよそのくらい」
優介「……リップ?」
「医者がお前にホラふいたんだよ」
優介|「
先生《せんせい》やさしいよ、他の人も……
ぜったい良くなるって」
「他人事だから適当に喋ってるだけだ、どいつもこいつも」
優介「ちがうよ……」
「あぁぁ死にたくねえよ……年食ったら死ぬのが怖くなくなる……?
誰が最初に言ったんだ……ちくしょう
俺が地獄にいったらまっさきにそいつをぶち殺してやる」
優介「じいちゃん……」
「優介、何がなんでも生きのびることだけ考えろ
人をだませ、陥れて奪え、綺麗事なんかぜんぶ聞き流せ」
優介わからないよ……ぼく」
「わかるさ」
じいちゃんは面会の後、ほどなくして亡くなった。