鈴銀(suzugin)

小説を書いています 作品は少しでもわかりやすく、読みやすくするために 全ての漢字に読み仮名(ルビ)をふり セリフの括弧の前に人物名を記載する形式で書いています

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最近の記事

《小説》 破壊の大樹 (プロローグ)

10年前に死んだじいちゃんと話したことを思い出す 3歳だった僕がおっかなびっくり病室に入ると たくさんのチューブがあやとりみたいに うねうねとじいちゃんの体にからまっていたんだ 僕に気づくとベッドの上で骸骨みたいなじいちゃんが笑って 「優介か……」 消え入るような声で呼びかけてくれた 優介「元気になった?」 「……なるわけねえだろ、なりてえけどな」 優介「お医者さんきっと……良くなるって」 「リップサービスだよ馬鹿、気づけよそのくらい」 優介「……リップ?」

    • 《小説》瑠璃色の見える場所へ 第四話(完結)

      1 ぼくたちは砂浜の向こうで蜃気楼みたいに建っている ショッピングモールへ向かって歩いた 雪みたいな白さの建物にオレンジ色の屋根が乗っかっているのがいくつも見える たぶんぼくがどこかの砂漠で遭難したらモールの幻を見るんだろうな 何年か前に古い商店街やらスーパーを潰して作られたらしいけど 詳しいことは知ったこっちゃない ぼくだってオープニングセールのときに一度来たきりなのだ 距離が縮まってモールの姿が鮮明になっていくたびに 理沙の表情がこわばって、なんだか焦っているように見え

      • 《小説》瑠璃色の見える場所へ 第三話

        1 山道の最後のカーブで体重を傾けると 景色が、わっと広がって港町が見えた 潮の香りが青くきらめいていた 眼下の市街地の中へ降りていく 長い長い直線道路をぼくたちは走った 悠「海だ」 理沙「うん……」 道路には背の高い椰子の木がずらっと並んでいて 風といっしょに葉を揺らしている ぼくはアクセルを開けてスピードを上げた 理沙はぼくの体にぎゅっと抱きついてきた 2 「せきれい海浜公園」に着いた 波の聴こえる場所に駐輪場があって ベージュ色の砂浜の向こうにはショッピング

        • 《小説》瑠璃色の見える場所へ 第二話

          1 雲ひとつない青空だった ぼくはバイクの後ろに理沙を乗せて 鶺鴒市の国道を走っていた 赤信号で停まると理沙が話しかけてくる 理沙「悠くんはさ」 悠「なに?」 理沙「ずっとこの街に住んでるの?」 悠「そうだよ」 理沙「じゃあ詳しいんだね」 悠「住んでたのは東側の地区だから ぜんぶ知ってるわけでもないよ」 理沙「そっか……この街……好き?」 悠「まあ……嫌いじゃないよ」 理沙「……悠くんはクラスでモテるの?」 悠「いきなりだね」 理沙「なんか……知りたく

          《小説》瑠璃色の見える場所へ 第一話

          ピン……ポン 土曜の朝の優雅なモーニングは 一打の遠慮がちなチャイムによって壊された 誰だ、この飛島悠の ワンルームの平和を打ち破ろうとする不届き者は ええい知らないや、ぼくは居留守を構えることにした 16歳のぼくは休日を破壊する社会と戦うのだ 扉の向こうの声「あの……すみません」 悠「空き家ですよー!!」 扉の向こうの声「えっ」 それきり声は止んだ なかなか素直なやつのようだった ぼくはトーストを牛乳で流し込みながら テレビでYouTubeを見る作業に戻ったのだ

          《小説》瑠璃色の見える場所へ 第一話