鈴銀(suzugin)

小説を書いています 作品は少しでもわかりやすく、読みやすくするために 全ての漢字に読み…

鈴銀(suzugin)

小説を書いています 作品は少しでもわかりやすく、読みやすくするために 全ての漢字に読み仮名(ルビ)をふり セリフの括弧の前に人物名を記載する形式で書いています

記事一覧

《小説》 破壊の大樹 (プロローグ)

10年前に死んだじいちゃんと話したことを思い出す 3歳だった僕がおっかなびっくり病室に入ると たくさんのチューブがあやとりみたいに うねうねとじいちゃんの体にからまっ…

2

《小説》瑠璃色の見える場所へ 第四話(完結)

1 ぼくたちは砂浜の向こうで蜃気楼みたいに建っている ショッピングモールへ向かって歩いた 雪みたいな白さの建物にオレンジ色の屋根が乗っかっているのがいくつも見える …

7

《小説》瑠璃色の見える場所へ 第三話

1 山道の最後のカーブで体重を傾けると 景色が、わっと広がって港町が見えた 潮の香りが青くきらめいていた 眼下の市街地の中へ降りていく 長い長い直線道路をぼくたちは…

3

《小説》瑠璃色の見える場所へ 第二話

1 雲ひとつない青空だった ぼくはバイクの後ろに理沙を乗せて 鶺鴒市の国道を走っていた 赤信号で停まると理沙が話しかけてくる 理沙「悠くんはさ」 悠「なに?」 理沙…

3

《小説》瑠璃色の見える場所へ 第一話

ピン……ポン 土曜の朝の優雅なモーニングは 一打の遠慮がちなチャイムによって壊された 誰だ、この飛島悠の ワンルームの平和を打ち破ろうとする不届き者は ええい知らな…

4
《小説》 破壊の大樹 (プロローグ)

《小説》 破壊の大樹 (プロローグ)

10年前に死んだじいちゃんと話したことを思い出す
3歳だった僕がおっかなびっくり病室に入ると
たくさんのチューブがあやとりみたいに
うねうねとじいちゃんの体にからまっていたんだ
僕に気づくとベッドの上で骸骨みたいなじいちゃんが笑って

「優介か……」

消え入るような声で呼びかけてくれた

優介「元気になった?」

「……なるわけねえだろ、なりてえけどな」

優介「お医者さんきっと……良くなるって

もっとみる
《小説》瑠璃色の見える場所へ 第四話(完結)

《小説》瑠璃色の見える場所へ 第四話(完結)

1

ぼくたちは砂浜の向こうで蜃気楼みたいに建っている
ショッピングモールへ向かって歩いた
雪みたいな白さの建物にオレンジ色の屋根が乗っかっているのがいくつも見える
たぶんぼくがどこかの砂漠で遭難したらモールの幻を見るんだろうな
何年か前に古い商店街やらスーパーを潰して作られたらしいけど
詳しいことは知ったこっちゃない
ぼくだってオープニングセールのときに一度来たきりなのだ
距離が縮まってモールの

もっとみる
《小説》瑠璃色の見える場所へ 第三話

《小説》瑠璃色の見える場所へ 第三話

1

山道の最後のカーブで体重を傾けると
景色が、わっと広がって港町が見えた
潮の香りが青くきらめいていた
眼下の市街地の中へ降りていく
長い長い直線道路をぼくたちは走った

悠「海だ」

理沙「うん……」

道路には背の高い椰子の木がずらっと並んでいて
風といっしょに葉を揺らしている
ぼくはアクセルを開けてスピードを上げた
理沙はぼくの体にぎゅっと抱きついてきた

2

「せきれい海浜公園」に着

もっとみる
《小説》瑠璃色の見える場所へ 第二話

《小説》瑠璃色の見える場所へ 第二話

1

雲ひとつない青空だった
ぼくはバイクの後ろに理沙を乗せて
鶺鴒市の国道を走っていた
赤信号で停まると理沙が話しかけてくる

理沙「悠くんはさ」

悠「なに?」

理沙「ずっとこの街に住んでるの?」

悠「そうだよ」

理沙「じゃあ詳しいんだね」

悠「住んでたのは東側の地区だから
ぜんぶ知ってるわけでもないよ」

理沙「そっか……この街……好き?」

悠「まあ……嫌いじゃないよ」

理沙「…

もっとみる
《小説》瑠璃色の見える場所へ 第一話

《小説》瑠璃色の見える場所へ 第一話

ピン……ポン

土曜の朝の優雅なモーニングは
一打の遠慮がちなチャイムによって壊された
誰だ、この飛島悠の
ワンルームの平和を打ち破ろうとする不届き者は
ええい知らないや、ぼくは居留守を構えることにした
16歳のぼくは休日を破壊する社会と戦うのだ

扉の向こうの声「あの……すみません」

悠「空き家ですよー!!」

扉の向こうの声「えっ」

それきり声は止んだ
なかなか素直なやつのようだった
ぼく

もっとみる