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やりたいことって多分、「書く」ことそれ自体じゃないのかもしれない。

好きなことは書くこと。
そこはいつだって変わらない。

でも自分の根本で本当に大切にしたいものは、別にあった。


島に来て、広報としてこれまでいろんな記事を書いてきた。
今まで大学にいるときは、書くことが苦痛で仕方なくて、レポート課題でさえも「うわぁぁ」ってなるほど。
でも、ずっと密かに、

文章で自分を表現できるようになりたい

そんな気持ちが頭の片隅にあって、
今年に入ってから自分のnoteを書き始めた。

島でも、自分が
「やってみたいです!」
と言って任されたお仕事は主にnoteの執筆。
いろんな人の話を聞いてみたいという気持ちと、それを文章にして広く届けたいという気持ち。
この2つが重なって、私は今も引き続き広報として、島で暮らしながら働く若者のインタビュー記事を書いている。

「うまく書けたかも...!」
ってはじめて書いた記事を先輩に見せたときは、めい一杯直された。
文章の構成から言葉一つ一つの言い回し、タイトル、リード文....などなど。

「どうやったら執筆がうまくなりますか?」
1を聞くと、いつもその先輩は10以上で返してくれた。
何かゼロからあたらしいことをしようと先を見がちな私に、まずはコツコツ、「noteを執筆する」という目の前の仕事をていねいに行うことの意味も教えてくれた。

あとから聞いたことだけど、
これまでずっとひたむきに、仕事でnoteを執筆し続けてきたその先輩は、自分が上司からいただいたものを今度は私に与えようとしてくれていたのだ。

そんな先輩のもとで執筆をするうちに、

もっと、もっと、
書くことを頑張ってみたい

いつしか自分の中で、そんな溢れ出る想いが生まれていた。
時間があるときには他の人の書いたnoteを何本も何本も読んでは、
どうしてこの人の記事はもっと読んでみたいと思えるのだろう?
と噛み砕いて、自分の執筆に取り入れてみたり。

私にとって「書く」ということはそれ自体、すごく奥深くて、おもしろくて。
ときには書いたもので読んだ人の心を大きく動かせる、魔法のようなものにも思えた。

「好きなことはなに?」って聞かれたら、これからも瞬時に、

「書くことです」

って答えるだろう。



でも、
自分がやりたいことって多分、「書く」ことじゃないのかもしれない。

ある日の広報の上司との会話をきっかけに、こんなことを考えるようになった。
上司とそのとき話していたテーマは、自分の「will=やりたいこと」。
一人一人の背景にあるストーリーを、カタチとして残したい
島にいる若者たちの等身大を発信したい
私がぼんやりと今思っていることを話したとき、上司が言った。

「君のやりたいことは、誰かの想いをすくいとってあげることなんじゃないかな?好きなことは書くことでも、本当にやりたいことはまた別にあるんだと思う。」

そう言われたとき、
あ、これかもってすごくしっくりきた。

書くことに加え、仕事をするなかで私が「わくわく」を感じられるのは、誰かにインタビューをしているまさにそのときだった。
じっくりと一人一人の話を聞くうちに、 

この人ってこういうことを考えていたんだ
こういう一面もあったんだ
本当はこういうことを感じていたんだ

っていろんな発見がある。

これまでの取材をふりかえると、
インタビュー中に自分のありのままの感情や考えを語る、みんなのあの生き生きとした表情や言葉が忘れられない。

一人一人に、大きい小さいとか関係なく、その人なりの想いがあるんだ。
ときには蓋をして、その想いがその人のなかだけで眠っていることだってある。

実際にさせていただいたとあるインタビューでは、インタビューを受けてくださった方が、これまで周りに言わずにいたことをはじめて言葉にしたあとでこう言った。

「やっと素直に言えた。」 と。

そのときの、どこか晴れやかですっきりしたような彼の表情が、今でも印象に残っている。率直に、なんだかうれしかった。

一人一人のありのままの気持ちをゆっくりと聞けるインタビューの時間は、私にとってもすごく濃いものなんだとあらためて思う。

好きなことは「書く」こと。
だけどそれは自分を表現したり、誰かの想いを言語化して伝える手段でしかないんだと思う。
それでも「書く」ということは、これからも自分にとってずっとずっと、大事にしていきたいものに変わりはなくて。

でも、自分が本当にやりたいこと、
その根本にあるのは、

一人一人の内なる想いをすくいとる

ということなのかもしれない。

書いて発信する、の前に、
一人一人の話を聞きながら内側にあるものを引き出したい。
自分も、他の誰かも、
自分の感じている「想い」というものを
ありのままに表現できたらな。


私が根っこで大切にしたいものは、
それだったんだ。


( イラスト: 妹のあや )




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