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再び、ゆずりはすみれさん司会の詩の読書会へ

 今夜は、静岡市鷹匠町のヒバリブックスで行われた「ひとり ひとり に 出会う ~はじめて詩集を読む会」に行ってきました。私は二回目ですが第三回目、峯澤典子さんの「あのとき冬の子どもたち」(七月堂)を皆で読みました。ホスト役は詩人の、ゆずりは すみれさん。2020年のユリイカの新人で静岡在住。最新詩集は『かんむりをのせる』。
 参加者は今回8名、私は少し遅れて着いたら、ゆずりはさんの隣の席に。またも恐縮しつつ着席。私を入れて男性は4人、今回はさとう三千魚(みちお)さんも来てくれました。
 詩集は読んできたという前提で(またも私は前半しか読んでなかったが)、参加者が順番に詩への感想などを語っていきます。以下出た意見を大まかに。『』の中は作品名です。
○鉄道や旅が好き。→自分も体験したが、一人旅を感じた。ここに居ない人と旅をしているようだ。
○体温、気温を感じる詩が多い。
○素顔で正直な詩が多い。盛り上げるような部分がない。
○なぜ「冬の…」とある詩集を、夏のいま取り上げるのかと思ったら、詩集のなかで春になり夏『初盆』で終わっているからだと分った。(笑)
○時の流れの中で、生きていく事の大変さが伝わる。読み進めるに従って、残っていた暖かさがひろがっていく。
○生と死が横たわり、自分がその中を生きていく。一冊の詩集として完成度が高い。
『一羽の』に、峯澤さんの詩の特徴がよく表れている。
 子供の頃、死んでいく動物たちを見守った「やわらかな時間」こそが、峯澤さんの立ち位置ではないか、と。息絶えていくまでの時間なのに、痛みもあるが、時の流れのなかで激しさをも「そういうものだ」と包み込む様な。この詩での話者は最後に「死ぬまで思い出さないように」と振り切って、大人になってしまうが。
○時間の流れに沿ったように構成されているが、受け入れられないもの(死)を、だんだんと受け入れ、共に生きていく形になっている。
○死との境目がないような感覚がある。
→例:『初盆』の「ほんとうに息をしているのは/どちらなのだろうか」
○『冬の子ども』余白がある、余白を読ませる。
→『通路』だけが散文詩となっている。→散文の中で絶句を作っている。
○本文のレイアウトとして、ノンブル(ページ表示)を入れたくない感じがする。
 →実際、文字のないページではノンブルは省かれ、純白にしてある。
○一篇ごとに、静かにだが決着をきちんと付けている所が好き。
 言葉に対する責任を果たしていると感じる。
○どちらかと言うと、横の動きを感じる。(列車の旅のような)
○音楽のシンコペーションの様な、リズムのずらし方がある。
 →読みながら書く様な詩人と、そうでない詩人が居る。
○ページをめくった所に必ず展開が来る。→右ページ起こしや中扉の共紙など、意図的な構成が製本の台割と同期して、開き易くなっているのでは。
 →編集を経験してきた峯澤さんと、装丁者の意図的な造本かもしれない。
○𠮷岡寿子さんがデザインした、カバーの右端に入れた題字の並べ方が面白い。
○初出を掲載していない。→今回載せていないのは意図的かもしれない。
 →全体で一つの大きな詩になるように構成したのでは。→収録に際して、各作品を手直ししているかもしれない。

 話題となった詩はこのほか『改札の木』『校庭』、詩集最後の『初盆』。私個人は前半に置かれた『バス停』の容赦のない暗さが印象的でした。けれどもこれが後半に向かって不思議な形で回復していく。死を受容する、あるいは自然な事として死(者)と共生する、この詩集からそうした強靭さの端緒を自分に見付けられる、そんな気がします。

 ゆずりはさんが峯澤さんの詩をよく読んで研究されていた事で、峯澤さんの詩が皆にいろいろな角度から解きほぐされていき、とても楽しい時間を過ごせました。
 峯澤さんが「わたしの詩の書き方「はつ、ゆき」(詩集『ひかりの途上で』)」…同詩集は第64回H氏賞、『はつ、ゆき』はその冒頭の詩です…を、このnoteにも書かれている事を、今回ゆずりはさんから教わりました。峯澤さんをフォローしてたのに読んでいなかった。折角手掛かりがあるのに無知だったワタクシ、反省しております。
 あと参加者の自己紹介のなかの話題で、詩人で翻訳家の山崎佳代子さんが静岡市出身である事なども分かり、私には収穫の多い時間でした。
 ゆずりはさんとご参加の皆さん、ありがとうございました。

2024年8月9日 大村浩一

 次回は10月4日、特別回として「みんなで好きな詩を持ち寄る会」をするそうです。自分がイチ推しの詩集や、詩情を感じた本をプレゼンしてみよう、という回です。
 参加されたい方は書店ヒバリブックスまでお問い合せを。参加費800円でワンドリンク付、先に詩集は自分で見つけておいてください。ヒバリブックスでも買えます。

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