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日詩20241231-2『エウロパの滲み』
妻が図書館で借りてきた
韓国のハン・ガンの『回復する人間』
よく見ると裏表紙のバーコードの下に
「小口に汚れあり」
と小さなラベルが貼られている
小口とは背表紙と反対側の端面だ
そこに何か飲み物が降り掛かった跡があり
本をめくっていくと
『エウロパ』の82ページに
特に入り込んでいると分かった
そこはヒロイン・イナの初ライブの
最後の歌の歌詞のページ
一枚めくると今度は
ヒロインとの出会いの時に歌われた
エウロパの歌詞
偶然なのか
読者がそこを開いていて降り掛かったのか
飲み物はココアかホット・チョコのようで
顔料ならば粒だから浸透しにくいと思い
カッターでそっと削ると
刃先にはココアの粒子が盛り上がり
うっすら紙に滲みた跡を残して
殆ど綺麗に取れた
気の利いたインデックスを
取ってしまったような気がするが
薄い滲みで大体の場所は分かる
物語は強烈な女との関わりだ
2024/12/31 大村浩一