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3 ぼくには千年生きたよりもたくさんの思い出がある。 ボードレーヌ詩集より 駅から射す蛍光灯の灯りを浴びて、三輪は改札口の手前でたたずんでいた。遠目にも、色濃い眼差しが見てとれる。 駅前の狭い通りに、車が停まっていた。 「三輪くん……」 学校帰り、隣を歩いていたジュンはヤツの名をつぶやいて、うつむいた。愁いをふくんだ横顔は「プリンセス王子」の名にふさわしく、はかなげだった。 強引でわがままなバラくんの言動を案じて、心を悩ましているにちがいない。いまとな