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1 星と空とはやっぱり星と空 レールモントフ詩集より 綿菓子に似た雲が二つ、黄砂の入り交じった空に浮かんでいる。 おれ――南川俊夫は、駅のホームに立つと、改札口につづく階段を振り返る。 (ジュンのヤツ、ナニしてんねん!) 褐色の電車が左手からすべりこんでくる。 8時20分発だ。この電車をのがすと確実に遅刻する。 (見捨てていくぞぉ) 車両に乗りこみ、扉が閉まる瞬間、幼なじみの菅谷純一が、うしろの車両に駆けこんできた。 おれは