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長篇小説

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「コーベ・イン・ブルー」(全7話)神戸港を舞台にしたクォーターの青年の愛と葛藤の物語。船会社の代理店から委託業務を引き受ける主人公が警察から殺人を疑われる過程で、ヤクザと渡し合い…
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2024年5月の記事一覧

【小説】コーベ・イン・ブルー No.6

  11  六甲おろしの吹き荒ぶ港に、春先の生温い浜風がまじり、潮の香りを夕暮れの岸壁に運ぶ。  季節の移り変わりが、人の心から警戒心をゆるめるのか、冒険好きな女の子らは、知り合った外国人の船に遊びにくる。  二人以上のグループだと安全だ思いこみ、船内を案内してもらい、その国の料理までごちそうしてくれるので、たのしいひとときを過ごせると勘違いする。その場合もあるが、異なる場合もある。  キヤップを目深にかぶった服部海人は税関に立ち寄り、出航手続きが完了したむねを報告し、新

【小説】コーベ・イン・ブルー No.7(最終話)

   13  このビデオは、黄金の葉っぱどころではなく、大木の枝になると、海人は八田組長に言った。 「今頃、ナニ寝呆けたことゆーとんじゃ!」  山野辺は、いきなり海人に殴りかかった。  反撃の体勢をとる前に、手下の石垣が、海人をはがいじめにした。  海人の顔面を、山野辺のこぶしが直撃。  一瞬、目の前が真っ暗になる。 「クソガキが、思い知ったかッ」  山野辺が吐き捨てると、石垣は海人の頭をドアに叩きつけた。  海人はその場にくずおれる。 「これは序の口やと思え。わかったかッ