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旅日記~北海道・釧路~


朝7時の飛行機に乗って、ひとり釧路にいった。


絵を見に行くために

この夏、釧路芸術館で鴨居玲(かもいれい)という画家の展示をしていた。タイトルは「生と死をみつめて」。存在は知っていたのだけど、実物はみたことがなかった。夏休みだしやすくない金額だったけど、なぜか今見に行ったほうがいい気がして勢いでチケットをかったのだった。久しぶりの空港でちょっと緊張して手続きを終え、無事に搭乗。窓からみえる景色を横目に、ふと、あと数時間後にはわたしは変わっているのだという確信をもった。なぜかその絵を見る前と後じゃ全然ちがうような気がして胸が躍る。


到着した釧路は快晴

東京とは比べ物にならないくらい過ごしやすい。冷たいけれどやわらかな風が吹いていた。空港から50分ほどバスに揺られてようやく釧路駅に到着。聞きなれない鳴き声に驚く。どうやらこの町では、海鳥の声がよく聞く鳥の声のよう。住んでいる地域が違うだけで、「よく聞くあの鳥の声」と言われて想像する声が違うんだな。

昼食と実家へのおみやげに市場へ。財布に余裕はなかったものの、せっかく来たのだからと噂の「勝手丼」をチョイス。「勝手丼」とは、自分で好きな具材を決めて海鮮丼をつくれるというもの。新鮮極まりないお刺身天国に心が躍る。写真で見ると少々地味な見た目だけれど、ほとんどが釧路産。思わずひとりでおいしすぎとつぶやくほどで大満足。


いざ芸術館へ

初めて見る実物は、自分の言葉じゃ追いつけないほどの体験をくれた。
油絵がメインだったこともあって、とにかく筆の運び、その勢い、絵具を重ねた分の重み、色の濃さ。絵を見るというより感じるといったほうが正しいかもしれない。わたし自身、まったくもって絵心のない人間で、2年前までは絵なんて興味もなかった。それが今じゃ絵のために遠征しているのだからおもしろいものだなと思う。行きの飛行機で抱いた確信は正しかった。いまでもうまく言葉にできないけれど、見終わって美術館を出た時の、世界のトーンが上がって海の匂いを鋭く感じたような、自分の五感の変化をよく覚えている。飛行機代がチャラになった瞬間だった。

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