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#シロクマ文芸部 甘い物は苺大福
甘い物は、大好物だ。しかし今は過去形…、
世の中に甘い誘惑を払いのけられる人はいるのだろうか。
「葉山さん、本気で痩せる気ありますか」
私の通う料理教室は、体に害が及ぶであろう食品を排除して料理のレパートリーを考える、スピリチュアル的要素も備えたダイエット料理教室である。
私のカバンから、こぼれ落ちた大福を見た講師の発言だった。
講師は声を強め生徒達に言った、
「砂糖、小麦粉、油脂、有りと有らゆる漂白された食品と油は、悪である。」
講師は手を広げ、皆に復唱を促した。
「添加物だらけのハム、ウインナーは毒物、インスタントラーメンなぞ、言語道断、ファストフードは癌とデブまっしぐら」
私を除いた生徒達は洗脳された信者のように信じて疑う事はなかった。
私はと言うと、少し冷めた目で周りと協調しながらも『食べ物にスピリチュアルを持ち込みたくはない』と思っていた。
甘い物を遠ざけることで、少しづつだが痩せる事が出来た。食事の後、口直しのアイスクリームも我慢できるようになった。
だが、世の中は甘い物で満ちている。
現に今日はバレンタイン、美しく陳列されたチョコレートを横目で眺めながらデパ地下を抜けてきた。
人生の節目には必ず甘い物でお祝いする、ケーキ、おはぎ、桜もち、私はこの教室のコンセプト、甘くない物を作るを無視して勝手に手が動き出した
先ずは 白玉粉を用意して
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次苺のヘタを取る
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講師はワナワナと震えながら
「葉山さん、あなたって人は…、いったい痩せる気があるのですか!」
「すみませ~ん、今後気を付けま~す。」
教室を後に、またデパ地下を歩いているとデザートコーナーは人だかりだ。今日はバレンタイン、
たまには自分のご褒美と旦那様にも甘い物をプレゼントしても良いよね。
葉山百合子は,苺大福を大事そうに抱えて家路を急いだ。
「あなた-、今日は手作り苺大福とお抹茶でまったりしませんか~。」
おわり