[毎週ショートショートnote]深煎り入学式(珈琲入学式)
「 カラン コローン 」
「いらっしゃいませ~」
青木佑樹は出張先で電車の時間潰しに見知らぬ喫茶店に入った
「ご注文は何されますか」
「コーヒーで」
「当店では珈琲豆が 浅煎り レギュラー 深煎りとございますがどれにされますか」マスターの眼鏡がキラリ❇と光った
佑樹は少し狼狽えて「じゃあ 深煎りでお願いします」と告げた
すると さっきまで静かに珈琲を飲んでいた客が立ち上がって拍手をした
「深煎り珈琲に入学おめでとう」
「なっ なんなんだここは!」
佑樹の前に まだ焙煎されてない生豆がおかれ ガスコンロの前に立たされた
「さぁ 豆を焙煎するところから始めましょう」
「えぇー このシチュエーション テレビで見たような…倉本聰ぽいっ…」
ロースターをカラカラと手回していると 豆の焦げるいい香りがしてきた
「そろそろ 深煎りの豆が仕上がりましたね 次はこの手回し豆挽き器を使って御自分で お挽き下さい」
佑樹はカリカリと音を立ててすられていく豆の香りを嗅いだ
もうすっかり ドラマの世界にはまっていた 気分は雪景色のカフェ……
気がつけば 帰りの電車はすでに出てしまった後だった
了
たはらかにさんのお題 毎週楽しみです ありがとうございます😘